羽生「プルシェンコのような強い選手に」=フィギュアスケート男子・メダリスト会見
負けたときに何を考えるかが大事
ライバルのパトリック・チャン(左)は銀メダル。GPシリーズでチャンに敗れたことが、五輪での勝利につながったという 【Getty Images】
日本的な文化を忘れないようにしたいと思います。尊重だったり……日本語って難しいですよね。敬語、丁寧語、謙譲語だったり、そういう言葉にも表れているように、尊敬する心、目上の方に対して自分を下げて言ったりだとか、そういう日本的な文化、文化的な人というか……。何て言えばいいんですかね、難しいですね。とにかく僕が見ていて、日本国民として恥ずかしくないというか、自分がテレビに映るので、それを見たときに日本人として今胸を張っていられるのか、それが一番大事なんじゃないかなと思います。
――多くの先輩が頑張っても取れなかった五輪の金メダルを取れた勝因は?
日本男子シングルが今ものすごくレベルが上がっていて、その中でどのようにして五輪の切符を勝ち取るか、どれだけ自分を高めないといけないという状況になったときに、人はすごく練習する、努力すると思います。そういう追い込まれた状況だったからこそ、こうやって成長できたのかなと思います。また、グランプリシリーズでパトリック選手と戦ってきたので、その中で、ただ負けるだけではなくて、負けたときに何を考えるかというのをすごく大事にして今シーズンやってきました。それが今回につながったのかなと思います。
――エフゲニー・プルシェンコ選手(ロシア)が棄権したが、彼に対する思いは?
プルシェンコ選手は僕にとってすごい憧れの存在でしたし、今でもすごく憧れています。僕にとって五輪というのは、どちらかというと五輪というものに価値があるわけではなくて、プルシェンコ選手と(アレクセイ・)ヤグディン選手(ロシア)が戦っている素晴らしい舞台というイメージでした。まだ8歳と小さいころでしたが、プルシェンコ選手に憧れて五輪を目指すようになりました。プルシェンコ選手が棄権して少し残念な気持ちもありましたが、五輪の団体戦という舞台で一緒に滑らせてもらったので、それが夢のような感覚でしたし、光栄だなと思います。彼のスケートがもしかしたらもう見られないかもしれない、というのは残念なんですが、今までたくさんの感動をいただいてきたので、とにかく感謝の気持ちを伝えたいと思っています。
自分のスケートをもっともっと高みに
特にないです。やらなきゃいけないと思ってやろうとは思っていないですね。自分はスケートが大好きですし、ジャンプが大好きなので、その中で好きだからやってみよう、というのはあるかもしれないですが、平昌(ピョンチャン)に向けて、だから何かをするというわけではないです。ただ、自分のスケートをもっともっと高みに持っていきたいという思いはあります。
――羽生選手を育ててきたのは仙台とトロント(カナダ)。特に仙台への思いが強い理由は?
生まれた土地だからだと思っています。そこで生まれ育ってスケートと出会って、姉がスケートを始めてそれについて行って、という自然な流れみたいな感じです。それがなかったら僕はここにいないですし、もしかしたら今ごろ野球をやって有名な選手になっているかもしれないし(笑)。やっぱり仙台、自分が生まれた土地があったからこそ、僕はここにいると思うので、仙台への思いが強いのかなと思っています。
――今後は子供たちから憧れられる存在になっていく。どんなアスリートになりたいか?
あまり憧れてもらうようなところはないかなと僕の中では思っています(笑)。自分はまだスケーティング技術などが未熟だなと、トロントで痛感させられましたし、ショートプログラムではうまくいきましたが、フリーでは精神的な弱さを実感したので、どんな場所でもノーミスでできるような強い選手になりたいと思います。プルシェンコ選手がそうだったからというのがあるんですが、彼みたいにどんなときでも強い選手になりたいと思います。
――(現地20日から)女子シングルが始まる。メダリストとして、特に浅田真央選手にアドバイスはあるか?
僕からアドバイスできることって何もないなと思っています。浅田さんもそうですが、五輪の怖さを知っていると思うので、その中でどれだけ楽しめるか、そういうことがすごく大事だなと感じました。僕はフリーを滑る前から「楽しんでいこう」と口でも言ってました。でも実際は楽しめなかったんですが、今思い返してみると、19歳の五輪はソチでしか行われなかったので、その中で全力で演技をして楽しんだんじゃないかなと思います。なので、とにかく全力で楽しんでいただけたらと思います。
<了>