巨人・杉内、プロ13年目の正念場 33歳、復活のカギはどこにある?

ベースボール・タイムズ

不安定だった移籍2年目

高校時代を過ごした鹿児島で自主トレに励む杉内、今シーズンの完全復活はなるか 【写真は共同】

 昨年11月3日、歓喜に渦巻いた仙台で、男は涙した。初回2死からの死球をきっかけに先制点を許すと、続く2回にも楽天・岡島豪郎に左中間を深々と破られるタイムリーを浴びて2イニング連続失点。2回途中4失点でKOされた第3戦の雪辱を誓って日本シリーズ第7戦に先発した巨人・杉内俊哉だったが、再び1回2/3という短いイニングでマウンドから引きずり降ろされた。

 兆候はあった。4月こそ5試合で3勝、防御率1.89の好発進も、翌月は4試合で0勝3敗、防御率4.40。4年連続無敗の14連勝や12年のノーヒットノーラン、過去3度の月間MVPに輝いて“ミスターメイ”の異名をとった得意の5月に急失速すると、その後も味方の援護もあって勝ち星は2ケタ11勝(6敗)に乗せたが、防御率は3.35と前年(2.04)から1点以上悪化した。

 ひとことで言うと「不安定」――。移籍1年目の12年に83.3%を誇ったQS率(クオリティスタート率)が、13年は一気に54.2%にまで急降下。最後はソフトバンク時代の03年、11年の日本シリーズで計4試合3勝無敗の看板を盾に頂上決戦に立ち向かった背番号18だったが、結局はシーズン中の不安が現実となった。

低下した奪三振率とチェンジアップの質

[表1]奪三振率が6年ぶりに9.00を下回った 【データ提供:データスタジアム株式会社】

 安定感を欠いた原因は何だろうか。

 まず初めに注目したいのが奪三振率だ。08年、09年、12年と過去3度も奪三振王のタイトルを獲得するなど球界を代表する奪三振マシーンである杉内だが、昨季は153イニングで149奪三振と、07年以来6年ぶりに奪三振率9.00を下回った。もちろん奪三振率8.76でも素晴らしい数字ではあるのだが、年度別奪三振率(表1)を見ると改めてその“不振ぶり”が分かる。

 奪三振率の低下は、空振り率の低下でもある。球種別空振り率(表2)を見ると、各球種とも年々空振りが奪えなくなっており、13年は特にチェンジアップの空振り率が大幅にダウンした。チェンジアップの質が落ちていることを自覚しているのか、球種別投球割合(表3)で分かるようにチェンジアップの投球割合自体も低下。自己最高の奪三振率10.74を誇った10年にはスライダーよりもチェンジアップを多く投じて次々と空振りを奪った杉内だったが、13年はストレートとスライダーに頼ったことで、結果的に打者に的を絞られて痛打される場面が増えることになった。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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