石川・福原の後継者候補3人が見せた成長=全日本卓球選手権・総括

小川勝

2大実力者に続くジュニア選手が台頭

平野早、福原を破る快進撃を見せた17歳の森。決勝は石川に敗れ準優勝となったが、積極的なプレーが光った 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 全日本卓球選手権は19日、東京体育館で6日間にわたる熱戦の幕を閉じた。注目された女子シングルスでは、20歳の石川佳純(全農)が3年ぶり2度目の優勝。平野早矢香(ミキハウス)と組んだダブルスでも5年ぶりの栄冠をつかみ、自身初の2冠に輝いた。3連覇を目指した福原愛(ANA)は準決勝で敗退。試合内容では、石川とともに日本の第一人者であることを示したものの、負けた相手は17歳の森さくら(昇陽高)だった。
 今大会は、こうした番狂わせが表すように、日本卓球界をリードしてきた石川、福原の2大実力者に続く、後継者候補のジュニア選手たちの成長ぶりを印象付けるものだった。
 石川の決勝は4−0の快勝で、結果だけを見れば、力の差を見せつけるものだった。これで、ロンドン五輪前年の2011年以来、優勝は石川、福原、福原、石川。この2人の時代が依然として続いていることに異論はないだろう。

 しかし今大会、石川の磨きのかかった3球目攻撃や、相手の特徴をつかんだ第2ゲーム以降の圧倒的な強さなどと並んで、驚くべき成長ぶりで観衆をあっと言わせたのが、3人のジュニア選手たちだった。準決勝で福原を破って決勝に進出した森、ジュニアの女子シングルスで優勝した14歳の加藤美優と、準優勝した13歳の平野美宇(いずれもJOCエリートアカデミー)だ。
 この3人について、16年リオデジャネイロ五輪の日本代表候補になれるかどうかは、昨年の段階では、まだ明確な答を出すことができなかった。しかし、今大会のプレーは間違いなく、その代表争いに加わる存在になってきたことをはっきり示したと言える。

高校2年・森がロンドン銀2人を撃破

 まず、決勝に進出した森だ。大阪府の出身で、中学は強豪の青森山田中に進学したものの、村上恭和・女子日本代表監督が設立した「関西卓球アカデミー」で練習するため、高校は大阪に戻って昇陽高に通っている。現在2年生。昨年もベスト16まで進出していたが、今年、大躍進を遂げた。
 準々決勝では、ロンドン五輪・団体銀メダルのメンバーで、全日本選手権優勝5回の平野早と対戦した。大接戦の末、ゲームカウント2−3の崖っぷちから2ゲームを連取して、4−3で勝利した。

 約2時間後の準決勝の相手は、全日本選手権2連覇中で、世界ランキングも日本選手最高位(9位)の福原。対する森の世界ランキングは156位だ。国内試合、国際試合、どちらの実績でも、かけ離れた相手に対して、17歳の森が驚くべき試合を展開した。福原が得意にしているバックハンドのラリーで、まったく引けを取らないどころか、強烈なドライブで何度も打ち勝った。そしてしばしば、福原より先に強打を仕掛けてポイントを奪った。最初の2ゲームはデュースになったが、第3、第4ゲームは11−4、11−6の圧勝。4−0のストレートで、福原を下したのである。

 試合後、敗れた福原は次のように語った。
「本当に強かった。すべての面で、相手に上回られた。完璧に押されてしまった。(ボールの)威力がすごかった」
 福原も調子はまずまずで、思い切って攻めた強打はよく決まっていた。だが、森の圧倒的な積極性の前に、ほとんどのラリーで守勢に回ってしまい、思うようなプレーができないまま、敗れた試合だった。
 決勝では、石川の多彩なサーブに対応できず0−4で敗戦と、課題も浮き彫りになった。それでも、ロンドン五輪のメンバー2人を撃破したにもかかわらず、「悔しい。(石川は)精神的にも技術的にも、私より何倍も上」とコメント。満足感を表に出さないあたり、今後、たゆまず向上していく素質は十分のようだ。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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