安楽智大、右肘の逆境を力に変えて――夏の全国制覇、その先の夢へ始動!
動き出した今年のドラフトの目玉
今秋ドラフトの目玉と称される済美高・安楽が始動。104日ぶりにキャッチボールを行った 【寺下友徳】
昨春のセンバツ大会では計772球の熱投で済美を準優勝に導く活躍をした安楽は、夏の愛媛大会準決勝、川之江戦での最速157キロを筆頭に、常時145キロ以上をマークする豪腕ぶりを発揮した。甲子園では春とは異なる雰囲気に自らのペースをつかめぬまま、3回戦敗退となったが、続く18U野球W杯では松井裕樹(桐光学園高→東北楽天ドラフト1位)とともに日本代表のエースとして君臨。森友哉(大阪桐蔭→埼玉西武ドラフト1位)のリードに導かれ、スライダーを有効に使っての2試合完封勝利含む18回無失点で、大会最優秀先発投手にも選出された。準優勝メダルと「勝てる投球を学ばせてもらった」代表でのエッセンスを手に、今度は主将として済美での2年連続センバツ出場へ挑んだ。
豪腕を襲った試練
昨年9月22日の愛媛県大会1回戦、安楽にアクシデントが…… 【寺下友徳】
ところが中5日を経て迎えた9月22日、愛媛県大会1回戦。投球練習時から「右肘がつるような感覚があった。野球生活で初めての感覚」に襲われた安楽は西条打線の餌食となる。初回に3連打で2点を失うと、3回表も安打と失策に続き、これまでの彼であれば考えられない抜け球での死球。この時点で右翼に退かざるを得なかった。
それでも最終回には夏の甲子園3回戦、花巻東戦の3ランを彷彿とさせる豪快な2ランで追いすがった安楽であったが、2対4で敗れ、センバツの夢は露と消えた。翌日、肘を検査した安楽に下った診断は「右腕尺骨神経まひ」。1年夏、愛媛大会からの公式戦登板36試合で計3513球を投じてきた豪腕にとって最大の試練が、ここから始まった。