データで占う箱根駅伝、優勝の行方=V狙うなら“花の2区”より“山の5区”?
駒澤大は学生駅伝3冠なるか!? 箱根駅伝の優勝の行方を、データから展望した 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】
“山”もデータ的に見て興味深い。近年の箱根駅伝は山上りの5区で快走したチームが優勝するケースが多い。今回も5区を制したチームが箱根を制するのだろうか? それとも平地のスピードを生かしたチームを、勝利の女神が見放さないのか? 箱根駅伝の栄冠の行方をデータをもとに展望してみたい。
駒澤大、史上4校目の3冠へ条件そろう
“山の大東”と言われた大東文化大は、3冠達成を果たした91年の箱根で、5区に奈良修、6区に島嵜貴之とスペシャリスト2人を擁していた。それに加えて、2区に96年アトランタ五輪マラソン代表となる実井謙二郎、3区で2年連続区間賞の大津睦らがいた。驚くべきは全日本を、奈良と島嵜を外したメンバーで勝っていること。選手層が厚かったことを示すエピソードだ。
順天堂大は岩水嘉孝ら“クインテット”と言われた強力学年が3年生で、4年生に高橋謙介がいた。早稲田大も八木勇樹、矢沢曜、三田裕介の3年生トリオを中心に、2年生に箱根2区を任せられた平賀翔太、1年生に大迫傑がいた。
3校の共通点は“粒ぞろい”だったこと。そして今季の駒澤大もそれに劣らない陣容だ。3年生の中村匠吾と村山謙太は出雲、全日本と連続区間賞。4年生にキャプテンの窪田忍と1500メートル学生チャンピオンの油布郁人。そして中谷圭佑(1年)と馬場翔大(2年)も全日本で区間賞を取っている。
駒澤大には「箱根の20キロの距離に対応できるか」「9番目以降の選手が大丈夫か」という課題はある。だが、柱となる選手が快走すれば、つなぎの区間も“駅伝の流れ”に乗って好結果を出す可能性は高い。
4校目の快挙が懸かるが、大八木弘明監督はリラックスモードを強調する。
「うちは今年は育成の年。『3つのうち1つを取れたらいい』くらいで考えていたら、2つ勝つことができた。勝つことで選手層も少しずつ厚くなってきたので、箱根の優勝も狙える雰囲気になってきました。でも、もとは3位以内が目標でしたから、プレッシャーなく臨めます」
3冠より多い2連覇 前回Vの日本体育大にも可能性
ならば3連勝が多くてもいいはずだが、3連覇以上を達成したのは23回中5回しかない。勝負ごとの難しいところであり、学生駅伝の面白いところだろう。
前回優勝の日本体育大にも、2連勝できる要素は数多くある。その一番が、昨シーズンから服部翔大がキャプテンを務めていること。服部に加え矢野圭吾、本田匠と4年生になった主力3人が今季、クロカン、トラックでも大活躍した。2年生となった山中秀仁は9月の日本インカレ1万メートルで3位。4本目の柱に成長し、前回区間賞の服部がいるにもかかわらず、山上りの5区を志願しているという。
秋口までは、日本体育大の連覇の雰囲気が強かった。しかし、駅伝シーズンが始まると、出雲は3位、全日本は8位と、上位2位の駒澤大と東洋大に水を開けられる結果となった。だが、全日本の8区で脱水症状となって失速した矢野と、出雲・全日本を欠場した本田が11月17日の上尾シティマラソン(ハーフマラソン)で共に1時間2分台の快走。戦力的にはV2の体勢が整った。
昨シーズンは、寮生活やグラウンド掃除、あいさつなど、別府健至監督の言う「目に見えない部分」を徹底したことが優勝の背景にあった。可視化できない部分だけに、どこかに油断があると歯車が狂う。日本体育大の連勝は、戦力よりも“見えない部分”にこの1年で真摯(しんし)に取り組めたか、に懸かっているのかもしれない。