駒大、箱根駅伝V&3冠達成の鍵は?=苦手5区より意識したい“つなぎ”の走り

石井安里

レースを左右する中村の起用区間

箱根駅伝では、出雲、全日本の1区で快走した中村(写真)の区間配置に注目だ 【スポーツナビ】

 駒澤大の強さは本物だが、箱根になれば日本体育大、東洋大、駒澤大のどこが勝ってもおかしくない。10区間217.9キロの長丁場で、山上り、下りの特殊区間がある。駒澤大は、前回の復路を走った4人が卒業、4区だった湯地俊介は今回のエントリーから外れており、経験者は5人。不安材料があるとすれば、経験者が少ないことと山の2区間だ。特に6区を4年間務め、区間記録を保持している千葉健太(現・富士通)の抜けた穴は大きい。前回の5区は村山だったが、それは適任者がおらず、走力の高い村山に任せただけ。大八木監督もレース後に、「次回は適任者を育て、村山を平地に戻す」と話しており、村山の秋以降の動向や成長ぶりからしても、続投の可能性は低い。となると、初挑戦の選手に託すことになる。

 前回優勝の日本体育大は出雲3位、全日本はアンカーのブレーキで8位に沈んだが、戦力は充実。5区には前回の優勝の立役者・服部翔大、6区に鈴木悠介と、4年生の経験者を擁する。3大駅伝で5大会2位が続く東洋大も、駒澤大同様に初挑戦の選手だが、双子の設楽啓太、悠太兄弟ら4年生を中心に分厚い選手層を誇る。前回、逆転を許した5区に、エースの設楽啓をぶつける可能性もある。コンディション次第だが、往路からハイペースで進むことは必至だ。

 箱根では4本柱をすべて往路に投入するとは考えにくく、復路のエース区間の9区には、抜群の安定感があり、信頼のおける主将の窪田を残しておきそうだ。注目は、夏のユニバーシアードでハーフマラソンの銅メダルを獲得した中村の起用区間。1区に使ってライバル校に先行するか、または1区を油布か西山で好位置に付け、2、3区の村山と中村で引き離すか。この采配が、レース全体に影響することは間違いない。

復路のつなぎ区間をどう乗り切るか

 もちろん、5区も重要だ。大八木監督は候補選手の名前こそ明かさないが、「守るのではなく、攻めてほしい。それだけの力はあると思う」と話した。期待の表れであり、適任者を育成できたことがうかがえる。

 ただ、日本体育大の服部、東洋大の設楽啓を相手に貯金を作ることは難しい。往路優勝には、4区までに2分以上のリードが必要だ。「4区までハイペースでいきたい。往路で勝ちたいし、悪くてもトップと1分以内で」という大八木監督。総合優勝するためにはそれが必須だが、日本体育大と東洋大の顔ぶれからすれば簡単なことではない。全日本の4区では、村山が区間2位の日本体育大・服部に14キロで1分08秒もの差を付けたが、箱根になれば他校のエース級に大差は付けられないだろう。過去2回の箱根で2区9位、5区8位と良いところのなかった村山が、今大会でどんな走りを見せるか注目されるが、まずは、駒澤大としては往路の5人全員がミスのない走りをして、復路につなぎたい。

 駒澤大の総合優勝へのポイントは、復路の6〜8区。つなぎの7、8区は選手層が明暗を分ける区間で、東洋大はここに自信を持つ。駒澤大の中間層も力を付けているが、駅伝の実戦においては未知数。往路で良い流れに乗れば、力を発揮できるかもしれないが、6区で2日目のスタートを切る箱根では、4本柱に挟まれて走った出雲や全日本のようにはいかないだろう。9区につなぐまでの3区間を、いかに乗り切るかが課題だ。

 超高速時代を迎えている大学駅伝界、駒澤大が3冠で歴史に名を刻むことができるか注目したい。

<了>

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著者プロフィール

静岡県出身。東洋大学社会学部在学中から、陸上競技専門誌に執筆を始める。卒業後8年間、大学勤務の傍ら陸上競技の執筆活動を続けた後、フリーライターに。中学生から社会人まで各世代の選手の取材、記録・データ関係記事を執筆。著書に『魂の走り』(埼玉新聞社)

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