オルフェの背で味わった希望と絶望=池添が三冠、逸走、有終の有馬を語る

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凱旋門賞乗り替わりを知ったとき

乗り替わりで絶望を味わった昨年の凱旋門賞、池添は複雑な気持ちで見守っていた 【netkeiba.com】

 オルフェーヴルと共に挑むと思っていた凱旋門賞が夢に消えたのは、函館開催最終日だったという。

「レースが終わって、函館から札幌に移動する時に、池江先生とオーナーから電話が入って。『ごめん。申し訳ないけど』って。聞いた時は、もう頭の中が真っ白でした。とりあえず札幌まで移動して、もう忘れようと思ってお酒を飲みました。いつもだったら絶対潰れてるくらいの量を飲んだんですけど、一切酔えなかったです。朝まで飲んでも、全然酔えなくて……。凱旋門賞へ行けるんじゃないかって思える馬との出会いなんて、一生に一度あるかないかですからね。本当にショックでした」

 その後フランスへ渡ったオルフェーヴルは、クリストフ・スミヨン騎手を背にフォワ賞を快勝。凱旋門賞でも、人気を集めた。

「去年の凱旋門賞は3日間開催の時だったので、調整ルームで何人かと一緒に見てました。勝って欲しかったですよ、もちろん。自分が乗ってる馬が世界一になるのは嬉しいことですから。勝って欲しいっていう気持ちと、乗りたかったなっていう気持ちと、両方考えながら見てました。レースは本当に惜しかったですよね」

 この時の口惜しさをバネに、池添は凱旋門賞での騎乗依頼をもらうためにどうすればいいのかを考え、今年の春行動に出た。

「一つの問題点がロンシャンで乗ったことないっていうことだったので、それをなくしに行こうと思って、フランスに行きました。まずは騎乗依頼をもらえなければ、どうしようもないですから。でもフランスに行ってる間に凱旋門賞には乗れないという知らせがあったので……。仕方ないことですけどね。去年ほどの衝撃はなかったですけど、もちろんショックは大きかったですよ」

オルフェのおかげで凱旋門賞を「目標」にできた

今年の凱旋門賞も騎乗することは出来なかったが、新たな「目標」も生まれた 【netkeiba.com】

 当初2か月間を予定していたフランス遠征だが、池添は1か月で帰国した。

「フランスへ行って1か月。オルフェーヴルに騎乗するのは無理になった。正直、今回フランスに行った目的は凱旋門賞に乗せてもらう可能性を広げるためだったので、その目的がなくなったのなら、もう居ても意味がないって思ったんです。でも今は、思い切ってフランスに行って良かったと思ってます。違う環境に身を置くのは勉強になりますし、刺激にもなりますから。(藤岡)佑介がフランスでオルフェーヴルの調教に一回乗ったらしいんですよ。『よくこのプレッシャーに耐えてますね』ってメールが来ました。フォワ賞の一週前だと思うんですけど、アイツもかなり緊張したそうです。僕としては乗って欲しくなかったですよ(笑)。日本人ジョッキーでは、オルフェーヴルの背中を知ってるのは僕だけだって思いたかったですし。レースと調教では違いますけど、他のジョッキーからしたら羨ましいと思います。アイツもフランスに行ってなかったら絶対乗ってないですから。遠征すると何があるかわからないし、本当にいい経験になりますよね」

 オルフェーヴルは今年もフォワ賞を快勝し、凱旋門賞でも1番人気の評価を受けた。

「今年は京都の知り合いのお店で見ました。勝って欲しいんですけど、勝っても負けてもモヤモヤすると思ったので、幸(英明)先輩に付き合って下さいってお願いして、あと元ジョッキーの柴原(央明調教助手)に付き合ってもらって、一緒に飲みながら見てました。また2着で残念でしたけど、凱旋門賞で2年連続2着なんて、たいしたもんだと思います」

 オルフェーヴルと共に凱旋門賞に挑む夢は消えた。しかし、池添には新たな目標が出来たという。

「いつか凱旋門賞に乗りたいし、勝ちたいです。オルフェーヴルに出会う前は、凱旋門賞というのは現実的ではなかったんです。やっぱり、ダービーを勝ちたいっていう方が大きかったですね。デビューした頃は『ダービーを勝ちたい』って簡単に口にしてたんですけど、乗るたびに二桁着順で、簡単に勝ちたいなんて口に出しちゃいけないレースだなって。経験を積んで重みが増していったんです。ゲシュタルトで4着に来て、初めてダービーのレースに参加出来たっていうのがあって、次の年にオルフェーヴルでダービーを獲ることが出来ました。だから本当に、凱旋門賞は遠くで見てる憧れのレースっていう感じで。この馬に出会って、現実的に乗れるかもしれないって思ってから、初めて凱旋門賞に乗りたい、勝ちたいっていう目標が出来ました」

 二度の乗り替わりを経験し、苦しみの中から新たな希望を見出した池添は、もう一度オルフェーヴルのパートナーに指名された。いよいよラストラン、有馬記念へ――。

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