ミラン本田「活躍して当然」からの出発=熱烈評価と冷ややかな視線の間で
評価を高めたイタリア戦でのプレー
CSKA時代にインテルやパレルモと対戦したこともあり、知名度はそれなりにはあった。だが、何より高い関心を引きつけたのは、イタリア代表と対戦した6月のFIFAコンフェデレーションズカップだ。攻撃センスのみならず、フィジカル面でもアズーリのMF陣を振り回していた様子を目の当たりにし、「実質彼がリーダーだし、プレーにはカリスマ性もある。間違いなくミランで通用する」とべた褒めした記者も数人いた。その一方で、「本田は通用するさ。かつてのようなスター軍団ではない今のミランならね」と冷やかに語り、「中村俊輔や、あの中田英寿でさえも1シーズン通してクオリティーを持続できたわけではなかった。本田が評価を受けるためにはそうならなければならない」と注文を出したベテラン記者もいた。
しかしファンにとって大事なのは、前評判よりも実戦で活躍するかどうかである。チームを取り巻く目は厳しい。第15節終了の時点で、ミランは首位ユベントスから勝ち点22もの差をつけられて9位と低迷。不振の原因についてミランのサポーターは、夏の間に効果的な補強ができなかったフロントをやり玉にあげた。「8月28日、DF1人と中盤1人が必要だとわれわれは訴えた。しかし、貴様らの答えは『ファンがメルカート(移籍市場)をやるわけではない』。すべてが明白、これが答えだ」。11月2日のフィオレンティーナ戦でゴール裏に掲げられたメッセージだ。ここでいう中盤とは、ボランチとしてゲームを組み立てられる選手のことだ。トップ下として、やや彼らの希望とは異なる本田が仮に活躍できなかった場合、彼を引っ張ってきたガッリアーニに対する反発は間違いなく大きなものになるだろう。
即戦力としての活躍しか道はない
ともかくバルバラは強化方針について、アーセナルさながらのスカウト部門を整備し、若くて才能のある選手の発掘を基本路線とすることを希望していると伝えられている。その点で言えば、現時点で27歳の本田は決して若くはない。近い将来、クラブの実権を握ると言われている女幹部を納得させるには、やはり即戦力としての活躍しか道はなさそうだ。
近年は落ち目と言われるミランであっても、ビッグクラブとしての注目度は群を抜く。「活躍して当然」というプレッシャーがかかる世界で、本田は即戦力として爪痕を残すことができるか。まずはそこに注目していきたい。
<了>