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阪神のギャンブル補強に感じる不安
思い出す中村GMの「勝ち運」の無さ

呉昇桓に懸ける首脳陣の期待の大きさ

スタンリッジを解雇し、呉昇桓の獲得に成功した、阪神の編成トップ中村GM(左)。果たしてこの補強は成功となるか
スタンリッジを解雇し、呉昇桓の獲得に成功した、阪神の編成トップ中村GM(左)。果たしてこの補強は成功となるか【写真は共同】

 阪神タイガースの補強戦線がようやく落ち着いてきた。新戦力の目玉は、クローザー候補として獲得した新外国人・呉昇桓(オ・スンファン)だろう。最速157キロの直球とスライダーを武器に、韓国球界最多の通算277セーブをマークした超大物右腕だ。


 阪神のチーム編成を司る中村勝広ゼネラルマネージャー(GM)は今季の阪神が優勝を逃した一因として、「藤川球児が抜けた穴を埋めるクローザーを年間通して固定できなかったこと」を挙げており、だからこそ来季はそこを呉に託すことで、弱点を補いたいと考えたようだ。前評判でささやかれている呉の実力は、全盛期の藤川と比較しても遜色ないらしく、日本でも年間40〜50セーブはできるはずだとか。本当のところはシーズンが始まってみないと分からないが、首脳陣が呉に懸ける期待の大きさは相当なものだろう。

“入れ替え補強”は果たして本当に補強か

 しかし、これは非常にギャンブル性の高い補強でもある。

 なにしろ、昨季の阪神は優勝を逃したとはいえ、チーム防御率はリーグトップだった。先発陣はエース・能見篤史を筆頭にメッセンジャー、スタンリッジ、藤浪晋太郎の4人が年間通してローテーションを守り抜き、リリーフ陣も、先発からクローザーに転向した久保康友が安定しなかったものの、その分ベテランの福原忍や安藤優也、加藤康介、さらに期待の若手・松田遼馬といった他のリリーフ投手たちが好成績を残した。

 もちろん、だからといって来季も安泰かと言われればそうとは限らないため、さらなる投手の補強を考えるのは現代プロ野球の定石なのかもしれないが、その定石とは現状の戦力に追加する“プラスアルファ補強”のことであって、わざわざ外国人枠の関係でスタンリッジを解雇してまで新外国人投手を獲得する“入れ替え補強”ではないとも思う。ご存じの通り、昨季のスタンリッジは打線との兼ね合いで勝ち星こそ伸びなかったものの、防御率はリーグ3位を記録した。そんな安定した先発投手であるスタンリッジとクローザー候補の呉を入れ替えるということは、果たして本当に補強になるのだろうか。これでもし呉が日本球界に適応できなければ、単純にスタンリッジを失っただけになる。


 ましてや、先発への再転向を予定した久保康友が横浜DeNAにFA移籍し、中日からFA宣言した先発右腕・中田賢一の獲得にも失敗した。巨額の投資で呉を獲得したものの、その一方では先発投手の数が減り、新たな不安が生まれている。そもそも先発投手がしっかりしていないと、リードを保ったまま試合を終盤まで運べないため、どれだけ優秀なクローザーがブルペンに控えていようが宝の持ち腐れになる。中村GMもそこに危機感を覚えたからか、今になって出血覚悟のトレードも考えながら、新たな先発投手の補強も模索しているという。スタンリッジ解雇の時点で、出血多量だと思うのだが。

山田隆道
山田隆道

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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