40カ国によるW杯は問題が多すぎる!=“マーケティング優先”増加案の是非

後藤健生

24カ国はグループリーグが複雑化で打ち切り

1994年米国大会では、グループリーグ3位で決勝トーナメントに上がったイタリアが決勝まで進んだが…… 【Getty Images】

 24カ国出場の大会がたった4大会で打ち切られたのは、24カ国の大会ではグループリーグの上位2カ国に加えて「3位のうち成績上位4チームが決勝トーナメントに進出」という複雑な作業が必要だったからだ。決勝トーナメントの組み合わせは、どこの組の3位チームが進出するかによって乱数表みたいな表に従って決定された。
 そもそも、違うグループに入ったチームを勝点や得失点によって比較することには無理があるし、最終日の下位チーム同士の試合結果によって決勝トーナメントの組み合わせがガラッと変わってしまうといった不都合さ、あるいは分かりにくさがあったし、グループリーグでは消化試合のような試合も増えてしまった。

 その点、32カ国にすれば「上位2チームのみ決勝トーナメント進出」となるから、そういう複雑さはなくなり、グループリーグの緊張感も高まる。

試合数増、大会期間延長で水増し感が……

 40カ国出場になったら、また同じようにフォーマットが複雑化してしまう。4チームずつ10組のグループリーグを作ったとすれば、上位2チーム=合計20チームでは決勝トーナメントができなくなってしまうが、まさか3位以上+4位チームの上位2チームを加えて32チームで決勝トーナメントを行うわけにもいかないだろう。

 グループリーグを5チームずつ8組とすればいいが、そうなるとリーグ戦で試合のない休息日が生じるので、日程による有利、不利が大きくなってしまう。いっそのこと、48カ国出場(6チームずつ8組のグループリーグ)にした方が大会としては分かりやすい。
 また、かつて16チーム出場で準々決勝以降はトーナメントだった時代には優勝するためには6試合を戦えばよかったが、1974年、1978年大会は2次リーグ方式が採用されたので決勝まで7試合となり、以後、32カ国出場となった後も決勝までの試合数は7のままだ。

 だが、出場国数を増やすとすると、試合数を増やしたり、開催期間も延長する必要があるかもしれない。しかし、この種のトーナメントで4週間以上にわたって緊張を維持することはかなり難しいことだ。そして、ただでさえ過密日程が問題になっている昨今、選手たちにとっての負担は非常に大きくなる。
 このように、40カ国によるW杯開催には問題点が多すぎる。その結果として、水増し感が増してしまうというのでは、40カ国出場案にはとうてい賛成するわけにはいかない。

本当の強さを身につけるには出場国減を!

 僕は、むしろ厳しい予選を行なうことによって出場国を減らし、本当に強いチームだけを厳選して、日程に余裕を持った中で高いレベルの試合を見てみたい。

 たとえば、最終予選は大陸別ではなく、世界予選にしてはどうだろう? その結果、弱小国は排除される。結果として出場国のほとんどがヨーロッパ勢という事態にもなりかねないが、それはそれで仕方がない。日本の出場も難しくなるかもしれないが、その代わりに、たとえばブラジル代表やスペイン代表との真剣勝負が埼玉スタジアムで見られるのだ。

 甘いアジア予選で毎回のように「世界最速」予選突破ばかりしていたのでは、いつまでたっても本当の強さは身につかない。それに、ヨーロッパ勢と予選を戦っても、今の日本代表なら予選突破はけっして不可能なことではないと思う。

<了>

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著者プロフィール

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、観戦試合数はまもなく4800。EURO(欧州選手権)は1980年イタリア大会を初めて観戦。今回で7回目。ポーランドに初めて行ったのは、74年の西ドイツW杯のとき。ソ連経由でワルシャワに立ち寄ってから西ドイツ(当時)に入った。

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