国内最強は椎野大輝か!? 岩佐亮佑か!?=12.6東洋太平洋バンタム級王座戦

船橋真二郎

村田、井上兄弟以上に魅力のあるカード

12月6日に行われる王者・椎野(左)と挑戦者・岩佐による東洋太平洋バンタム級タイトルマッチは世界を見据えたサバイバルマッチとなる 【スポーツナビ】

「日本ボクシング界には現在10名の世界王者がいるが、次の段階として、内容を見せなければならない中、カードとしては申し分ないと思っている」
 10月15日、東京ドームホテルで行なわれた発表会見で、浜田剛史・帝拳プロモーション代表が胸を張ったとおり、12月6日の両国国技館は注目カードがずらりと並ぶ豪華興行となった。

 WBC世界フライ級王者の八重樫東(大橋)が、10度の防衛を誇った元WBC世界ライトフライ王者のベテラン、エドガル・ソーサ(メキシコ)を迎え撃つ2度目の防衛戦は別格として、ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(三迫)が臨むプロ転向第2戦、最短タイ記録となる4戦目で日本タイトルを獲得した“超新星”井上尚弥(大橋)が挑む東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦を、顔合わせの魅力という点では上回ると断言したいのが東洋太平洋バンタム級タイトルマッチだ。

 決定力を備える奔放なパンチャー、椎野大輝(三迫)が、WBC世界バンタム級1位で前日本バンタム級王者の正統派サウスポー、岩佐亮佑(セレス)を挑戦者に迎える初防衛戦は日本人同士のサバイバルマッチ。
「防衛戦という気持ちはまったくない。世界ランク上位の岩佐くんに僕が挑戦する試合」
 椎野が言うように、単純に王者対挑戦者という構図は当てはまらない。生き残ったほうが近い将来の世界挑戦を引き寄せる、国内最強決定戦となる。

「パワフルでテクニシャン」と評価が高い椎野

ここまで10勝中9KOと高いKO率を誇る東洋太平洋バンタム級王者・椎野 【スポーツナビ】

「サウスポーはアマ時代から苦手。岩佐くんは身長が高くて、距離も長い。ディフェンスがうまいし、相性としては最悪。簡単に言えば、やりたくない相手」
 岩佐とのスパーリング経験も踏まえ、あっけらかんと言ってのけるのが椎野という男のパーソナリティだ。その岩佐に対する戦略は「倒しにいくこと。勝つにしろ負けるにしろ、KOがいい」と豪放である。小学生のころは空手を、中学生ではキックボクシングを経験した。椎野少年の夢はK−1だったが、体が小さくてあきらめた。最終的にプロボクシングを選択した理由を「KOに魅力を感じて」と言うからブレはない。

 度胸の良さも椎野の武器だ。一昨年10月、敵地のフィリピンでWBCインターナショナルバンタム級タイトル(挑戦資格のないWBC16位から30位の選手で争われるタイトル)を11回TKO勝ちで獲得した。このベルトは昨年9月、再びフィリピンに乗り込み、苦手のサウスポー相手に8回TKO負けで手放したが、今年6月の後楽園ホールで同じ相手に右のワンパンチによる2回KO勝ちでリベンジし、現在のベルトを手に入れている。

 ただ、岩佐が「テクニックを持ちながらもパワフルなボクシングをして、当て勘もある」と評価するように、椎野は単なるラフファイターとは違う。タイトル獲得歴こそないが、土浦日大高校、東洋大学のアマキャリアで培ったテクニックがベースにあり、ボクシングにスリルを求める一方で「上に行くには緻密な技術が必要」という意識が根底にある。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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