国内最強は椎野大輝か!? 岩佐亮佑か!?=12.6東洋太平洋バンタム級王座戦

船橋真二郎

“神の左”山中との再戦望む“イーグル・アイ”岩佐

WBC世界バンタム級1位の岩佐。この試合に勝って山中との再戦を望む 【スポーツナビ】

 岩佐にとって椎野戦はやり残した仕事だ。セレス小林会長は、岩佐が日本王者時代から椎野との試合を望んでいたと振り返る。
「舞台が大きいほど、亮は燃える。椎野くんという世界王者以外の日本人ではナンバーワンの選手と拳をまじえれば、亮の世界レベルのポテンシャルが引き出されると期待している」
 小林会長の言葉どおり、初の日本タイトル挑戦で岩佐はその能力の高さを示した。当時の日本王者で現WBC世界バンタム級王者、山中慎介(帝拳)との緊迫感に満ちた攻防は、2011年の年間最高試合に推す声もあったほど(岩佐の最終10回TKO負け)。すでに5度防衛し、強力な左を武器に4連続KO防衛中の“ゴッド・レフト(神の左)”山中との再戦は岩佐が望む頂だ。
「山中さんとは統一戦でやりたいという願望が強い」
 岩佐の山中に対する思い入れは深い。

 中学生のころからセレスジムでボクシングを始めた岩佐は、小林会長の秘蔵っ子。名門・習志野高校で鍛えられ、3年時に選抜、インターハイ、国体の3冠を果たした。鳴り物入りでプロデビュー後、元WBA世界スーパーフライ級王者でもある小林会長が“イーグル・アイ”と名づけた勘の良さとスピードをベースに、攻守に精度の高いテクニックを見せ、着実にステップを上がってきた。

 だが、大差判定勝ちでクリアした世界ランカーを含む外国人選手とのここ3戦は、岩佐の実力と試合内容を天秤にかければ、評価は物足りなさに傾いた。椎野戦に向けて、岩佐も「どこか消極的になっていた自分を吹っ切って、もうひとつ殻を破る試合」と話す。

ともに世界を見据える重要な一戦

 椎野が一発を秘めているだけに、予想は難しい。いつにも増して、序盤の主導権争いがカギになるだろう。椎野は「先に顔面でもどこでも一発当てて、嫌な印象を与えたい」と言うように、早い段階で強打を印象づけ、岩佐をかき乱したい。逆にリズムに乗せてしまえば、岩佐の「圧倒的な試合をしたい。KOは狙わないが、最初から圧倒できれば、自然とついてくる」という思惑どおりに運ぶ可能性も高くなる。

 妻と3歳の息子が原動力という椎野は「もっと稼ぐためにも、もっと高いところに行かないといけないし、ボクシングでもっといい景色を見せてあげたい」と意気込む。山中を追いかける岩佐は「正直、完封する自信はある。でも、さばくだけでは世界の壁は越えられない」とハードルを課す。表現の仕方こそ違えど、世界を見据える両者にとっての重要な一戦は、やはり一見の価値がある。

<東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ>
[王者]椎野 大輝(三迫/12戦10勝(9KO)2敗)
[挑戦者]岩佐 亮佑(セレス/16戦15勝(9KO)1敗)

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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