『戦える状態』でなかった男子バレー=5戦全敗で問われる『全日本代表』の意味
世界の強豪が集まったグラチャンで、戦前の予想通り5戦全敗となった全日本男子。 【坂本清】
急成長を続け自信をつけるアジア王者イラン
2011年のアジア制覇から自信をつけ、急成長を遂げるイラン。その要因のひとつが名監督の存在である 【坂本清】
スタンドの一角を占めるイラン人サポーターが監督の名前を連呼する。国名でもなく、選手名でもない。見慣れぬ、珍しい光景だった。イタリアを2度の世界選手権優勝に導いたジュリオ・ベラスコ監督が就任した2011年以降、イランはアジア選手権で優勝するなど、国際舞台で着実に結果を残してきた。
今大会でもイタリア、米国をフルセットの末に破る金星を上げている。スタンドのコールはベラスコ監督が選手だけではなく、イランのバレーボールファンにも信頼され、功績を認められている証拠だろう。
試合後、ベラスコ監督は記者会見でこう話した。
「これほどハイレベルな世界大会で満足できる成績を残せ、わたしたちはより一層、自信を深めることができました。イランの選手を誇りに思っています」
ここ3年間、国際大会で負け続けているイランを相手に、今大会、日本は1セットも取ることができずに完敗した。「戦うたびにすべてにおいてレベルアップしている」と主将の山村宏太が話すように、その差は着実に開き、今や日本が大きく後れを取っていることは誰の目にも明らかだ。
実戦少なく、想定を超えたブロックを破れず
ロシアや米国のブロックは、想定よりも高く、硬いものだった…… 【坂本清】
「2年前、アジアチャンピオンになったことで、わたしたちには自信が生まれました。そしてその自信によって、自分たちのメンタルやプレーをうまくコントロールできるようになりました。ベラスコ監督が就任して以来、さまざまな強い国と試合をしたこともメンタルが強くなった原因だと思います」(マルーフラクラニ・イラン主将)
強豪国を相手にテストマッチを試みてきたイランに対し、日本はどうか。
今年、出場した国際大会はワールドリーグ、世界選手権アジア予選とドーハ4カ国対抗戦、そしてアジア選手権。合計23試合を戦っているが、その対戦相手のほとんどがアジアの国だった。当初、予定されていた米国遠征が流れたあとも、特にアクションを起こすことなく国内合宿をくり返してきた。
ロシア戦のあと山村はこう語っていた。
「ロシアの高さを想定して、ブロックに見立てた板を相手に練習しました。練習では角をねらったりサイドをねらうイメージで、ブロックアウトやリバウンドを取れていたんですけど、実際の試合になると想像以上に高く、腕が前に出ていて、練習と同じようにはいきませんでした」
米国、ロシアといった身長の高い選手をそろえた国でさえ、日本のブロックに対し、ブロックアウトを取ろうとあえて指先をねらって打ってくる。米山裕太も言った。
「リバウンドを取って攻撃を立て直そうという意志はあるんです。でもブロックに当てようという意識が強過ぎて、ヒジが下がり、そうすると当たったボールが真下に落ちてしまう。もっと手の平の上をねらえば、リバウンドボールも高く跳ね返るので、そうアドバイスしても、なかなか思うようにいかない。Vリーグでは経験できない高さを目の当たりにして、もっと海外の選手とたくさん試合をしなければ厳しいと思いました」
国内で紅白戦を行うだけの練習方法には限界があったのだ。