馬主と厩舎、信頼が育んだ3世代目の女王=マンボ牝馬の頂点へ飯田祐史調教師の勝算
メイショウマンボが牝馬の頂点へ――飯田祐史調教師に話を聞いた 【netkeiba.com】
オーナーの懐の深さ
主戦・武幸四郎(右)も松本オーナー(左)の馬で勝ちたい気持ちは人一倍強い 【netkeiba.com】
「僕にしても幸四郎にしても、デビュー当時からお世話になっていますし、身近なところで支えていただいてます。(馬の使い方にしても)とにかく我慢をして下さるし、本当に温かいですよね。自分が同じくらいの立場で、同じように出来るかって言ったら出来ないと思うんです」
騎手として、そして現在は技術調教師として、長年近くで接して来たからこそ、オーナーへの感謝の気持ちは人一倍強い。
「よく人のつながりだとか、今年でいうと絆とか。そういうことを言うのは簡単なんですけど、それを何十年も実行し続けられるというのは、よほどの方じゃないと無理だと思うんです。幸四郎自身がオーナーにお世話になっているっていう気持ちが大きいと思うし、そこは僕と一緒だし。オーナーの馬で勝ちたいっていう気持ちも強かったです」
ひと夏を越えて秋華賞へ向かう過程においても、松本オーナーの懐の深さを改めて感じたという。オークス激走後は、さすがに疲れが出たメイショウマンボ。担当獣医からの進言もあり、夏は疲れを取ることを大前提に、調整はゆっくりと進められた。
「秋華賞に照準を合わせていたので、ローズSの前は“調整が遅れているんじゃないか”とか“太いんじゃないか”っていう声も耳にしていました。そこで厩舎としてブレないで調整が出来たのはすごく自信になるし、それが出来たのはオーナーがどっしりと構えていてくださったお陰であって。そうじゃなかったら、今の時代にこういうメニューは組めないかもしれないです。ジョッキーも、GIホースに乗って休み明けで負けたら一発で乗り替わりってよくあると思うんですけど、どっしり構えていてくださったオーナーと、そのオーナーとの信頼関係を築いてくれた(父・飯田明弘)調教師のお陰ですね。
もちろんトライアルとはいえ馬券も売っていますし、ファンの方々から応援もしてもらって、勝つつもりでやっていました。ただその中で、次につながるレースとして戦えたので。秋華賞は絶対に落とせないという気持ちだったし、そこで勝つことが出来て、本当に強いなって認めてもらった気もしています」
メイショウ3世代の“気の強さ”
「お祖母さんのメイショウアヤメは強烈でした。体がガッチリしていて、2歳でお尻ムキムキでしたから。もう、全然抑えきれなかったですね。自分が今よりももっと未熟だったこともあるんですけど、じゃあ今乗ったら抑えられるかって言ったら、それも自信がないくらい(笑)。インパクトがすごかったです。調教師試験に受かった時に“ジョッキー時代で一番印象的な馬は?”って聞かれて、アヤメのことを言いましたもん。
お母さんのメイショウモモカもすごく引っ掛かる馬で……。勝ち切れずに早めに繁殖入りしたんですけど、こんな素晴らしい仔を産んでくれて嬉しいです。これも3代続けて同じ厩舎に預けていただいているからであって、ホントに有難いです」
とにかく気が強くて引っ掛かる一族の中から、気は強いけれど乗りやすいメイショウマンボが生まれた。
「お祖母さんはとにかく我が強いんですよ。引退して牧場に行ってからも、『わたしはアヤメよ』っていう、そういう感じで。マンボはハートが強いんです。同じ強いでも、心が折れないんですよ、この馬は。牝馬って、一度ガタッて来るとなかなか戻れないじゃないですか。でもマンボは、競馬の後にガタッと来ても戻るんですよ。自分で立ち直るんですね。普通のGIに出るくらいの牝馬だったら、桜花賞で終わっていると思うんです。ガクッと来てそのまま。普通このパターンで、この短期間で戻らないですよ。すごい馬だと思います、ホントに」
長年築き上げて来た人と人とのつながり、そしてそのつながりで育んで来た血統が、メイショウマンボという女王を生んだのだ。