スーパーアグリ再演の意義=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第16回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

自動車業界の未来を担うレース

 実は2012年8月にFIAがフォーミュラE選手権シリーズ設立を発表したとき、日本からもトムスを始めいくつかの参戦希望者(社)があったという。しかし、FIAは初年度に参戦できるチーム数を10に絞ったため、それらの参戦希望は叶えられず、当初からプレストンが準備していたスーパーアグリ・チームが参戦を受理された。これは、グローバルに名前の知られたスーパーアグリの方がフォーミュラEの進展のため(知名度向上のため)にも好都合とFIAが計算したとも考えられる。鈴木亜久里はF1ではつまずいたが、その時に蒔いた種から芽が出てきたということだろう。

 フォーミュラE参戦には供託金1億5000万円が必要で、シーズンを通しての経費は上限3億円に抑えられている。クルマはワンメイク(初年度のみ。2年目以降は自製マシンでも参戦可)のフォーミュラで、スパーク・ルノーSRT_01Eと呼ばれる。プロトタイプが先のフランクフルトモーターショーに展示されていたが、完成度の高そうなクルマだった。

 パワートレインは一社ではなく、いくつかのサプライヤー(モーターはマクラーレン、バッテリーはウイリアムズ……等)から供給されたパーツを組み合わせて作られ、その技術監修はルノーが担当する。ルノーはこうした将来技術等の開発、展開、あるいは新事業への参戦などに昔から積極的だ。フランス人はヌーベルバーグが大好きだから先物買いを狙っている感もあるが、まあルノーの監修ということであればこのシリーズが眉唾物ではないという信頼もおけるとみた。

自動車メーカーの参戦も!?

 鈴木亜久里のチームのエントリー名はスーパーアグリ・フォーミュラEチーム。参戦は1チーム2台体制。ただ、約1時間のレースの途中でバッテリーがなくなるため、ドライバーはレース中にマシンを乗り換えることになる。つまり1チームに4台のクルマが必要になるわけだ。また佐藤琢磨が乗るのかなあ?

 最後に鈴木亜久里はこう言った。

「このレースは将来のモータースポーツには必須のカテゴリーです。スポンサーを探していますが、環境を考えたり、将来の動力源を考えている企業には打って付けのレースだと思います。多くの企業が支援してくれることを期待しています」

 将来、自動車メーカーも参戦を余儀なくされるであろうこのフォーミュラEレースに目をつけた鈴木亜久里。先見の明ありやなしや? 電気系統のトラブルで参戦断念てなことにならないようにお願いしますよ。

<了>

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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