ベスト8越えへ、進化続けるU−17日本=吉武サッカーを体現し、世界を驚かす
グループリーグ突破は“当然の目標”
終了間際の逆転劇に歓喜するU−17日本代表の選手たち。3戦全勝で決勝トーナメント進出を果たした 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】
ロシア、ベネズエラ、チュニジアと戦ったグループリーグ。ロシアは守備に強みがあったが、攻撃はウィークポイントだった。ベネズエラは攻撃力こそ高かったが、守備力は高くなかった。チュニジアはカウンターが3チームの中で強烈なチームだった。
初戦のロシア戦。吉武博文監督はロシアの高さ対策として、190センチのGK白岡ティモシィと、アンカーに181センチのMF三竿健斗を配置したものの、それは決して相手と同じ土俵で戦うためではなかった。あくまで相手のストロングポイントで勝負をさせず、徹底した地上戦に持ち込んで、いかにチャンスをモノにできるかにあった。
「高さに負けないコンパクトなサッカーができれば。ロシアは堅守速攻型なので、欧州選手権は5試合で1失点。得点もそんなに取っていないので、我々がじれずに攻めることができるか。0−0でも悪いとは思っていない」(吉武監督)
面白かったのが、ロシア戦前日のプレスカンファレンス。海外メディアから日本のシステムや戦い方について、具体的な質問があった。通常なら手の内を隠すために、上っ面な部分を語るのだが、吉武監督は「ウチは4−1−2−3で、攻撃時は……」などと細かく語り始めた。会見後に真意を聞くと、「時間があれば4−2−2−2になるとか、いろいろ言おうと思ったのですが(笑)。オープンですよ。この年代は今さら手の内を隠したり、変えたりしても仕方がないので」と胸のすくような答えが返ってきた。それくらい立ち上げ時からコツコツとブレない信念で作り上げてきたチームに絶対の自信を持ち、これまでやってきたことを否定するようなサッカーをしないという、強い意志が見えた。
吉武監督が選手たちに求めているもの
吉武監督が選手たちに求めているのは、「ハイアングルの俯瞰図」だ。そして、それが成長の尺度となっている。
例えば、攻撃面での課題でよく「決定力不足」が挙げられる。しかし、吉武監督にとってそれはシュートを決めきる、ラストパスの質を上げるという断片的なものではない。あくまでアタッキングサードでも相手をしっかりと見て、相手のいないところに仕掛けられるか。敵と味方の位置関係、身体の向き、有効活用できるスペースがどこかを、ハイプレッシャーなこのエリアでいかに見極めて、味方と動きを共鳴させ、ゴールに直結させることができるか。吉武監督は選手の主観と主体性を求めるが、それはつまり個の判断の質の向上を、繰り返し求めていることとイコールなのだ。これこそが吉武監督が目指すサッカーの根本にある。その観点からすると、ロシア戦は不満が大きく残ったということだ。