私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第11回 飯泉涼矢選手「全ての人にエナジャイズを!」
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多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第11回は飯泉涼矢選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
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「昨年ぐらいから個人的にメンタルコーチの指導を受けながら似たようなことに取り組んでいました。そこで大枠みたいなものは作っていて、面談を3回行って、言葉をさらにブラッシュアップしていった感じですね。4~5回目で確定しました」
Q.個人的にどのようなことを行っていたのですか?
「メンタルコーチから自分の本質を出すとエネルギーに変わるからやった方がいいと言われて、ピッチ内とピッチ外で分けて、自分を見直す作業を行うようにしたんです。ただ、スローガンみたいなものは決めていなかったので、そこをどうしようかと考えていた時にこの面談を行ってくれたので、すごく良かったです」
Q.面談を行ってみていかがでしたか?
「自分がどういう人間でありたいかという考えはぶれることはありません。そのための表現の仕方など細かいところを突き詰めることを意識しましたが、『自分がこうしたい』ということを最初の面談でしっかり伝えて、それをまとめていった感じでしたね」
Q.その考えを持つようになったのはいつ頃からでしょうか?
「高校の時にはある程度自分の個性というか、キャラクターはできていたと思います。ずっとサッカーをしていく上でそれを大事にしてきました。自分の考えをしっかりと確立できたのは大学の時だったと思います」
Q.完成したMVVを見ていかがですか?
「難しいのが、それだけではないなと思うところもあるんです。とはいえ、自分の中でぶれない軸があることはいいことだとあらためて感じます」
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「あえて『すべての人』という表現にしたんですけど、たとえば、自分がサッカーをしている姿でもいいですし、この記事を読んでくれてもいいですし、とにかく多くの人にポジティブな思いになってもらいたい。勝った試合だけでなく、たとえ負けた試合でも最後まで頑張っている姿とか、周りを鼓舞している姿とかを見て何かを感じてもらいたい。自分に関わってくれている人だけでなく、見ている人にも影響を与えられる存在になりたいと思ってこの言葉にしました」
Q.そういうことを高校ぐらいから考えていたのでしょうか?
「自分が言われて嬉しかったのは『涼矢っていつも楽しそうにサッカーするよね』という言葉。指導者とか、保護者だけでなく、試合を見た人にそう言ってもらうこともありました。だから、高校ぐらいからそういう思いが強くなりましたね。あと、サッカーは11人+交代選手しか表舞台には立てません。自分もその中に入れない苦しい思いをたくさんしてきました。だからこそ、出場機会に恵まれないチームメイトに対して、ネガティブな影響ではなく、ポジティブかつ前向きの影響を与えられる存在になりたい。そういう存在はチームに必要だと思うので、その意識を強く持っています」
Q.飯泉選手自身がお手本にしている選手や存在はいますか?
「高校・大学では先輩たちがそうしてくれていたんです。その中で自分にしかできないことを見つけようと思っていました。自分が苦しい思いをしてきた時に励ましてくれた人がいたからこそ、そういう存在の大切さを知ることができました」
Q.今季、下位に低迷する苦しい時期が続きました。飯泉選手自身も出場機会に恵まれない時期が多かったです。それでも、飯泉選手は明るい雰囲気を作っていたと思います。そういうことを意識していましたか?
「いい時に声を出したり、明るい空気を出したりすることは当たり前のこと。自分としてはどんな時でも後ろ向きの雰囲気を出さないようにすることを意識していました」
Q.チームが強くなるためにも、ポジティブな空気が大事だと思います。そうした雰囲気を作ろうと努めていたように感じました。
「前向きではない言葉が出る時って、チームとして前には進めないと思っています。勝てないとか、苦しいとか、そういう時こそ、言葉や姿勢は前向きにしないといけない。それがその状況から抜け出すために必要だと思っているので、意識はしていました」
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「自分が試合に出られているとか、出られていないとか、チームが勝っているとか、勝っていないとか、いろんなシチュエーションがあると思いますけど、そこでうまくいかない時に後ろ向きになってしまったら、自分としてもうまくいかないし、周りにも悪影響を与えてしまう。水戸で自分はフィールドプレーヤーでは最年長なので、チームに影響を及ぼす立場だと思っているので、だからこそ、『どんな状況でも前向きに』いることが大切だと思っています。それと、エナジャイズという言葉はメンタルコーチから教えてもらった言葉なんですけど、エネルギーを与えることを『エナジャイズ』というらしく、状況がどうあれ、みんなに対して負のエネルギーではなく、正のエネルギーを与えられるような存在を目指したいと思って、この言葉にしました」
Q.ポジティブにいようとしてはいても、落ち込む時もあると思います。そういう時に自身をどのように奮い立たせますか?
「それが自分の中の課題で、見つけられない時もあります。そういう時は一度めちゃくちゃ落ち込みます。『もう落ちるところはないな』と思えれば、あとは上がるだけなんです。だから、一度どん底まで落ち込みます。でも、そういう態度をみんなの前では見せないようにはしています。自分を奮い立たせるためのスイッチみたいなものを自分で見つけられるようになりたいとは思っています。あとは今まで大事にしてきた取り組みを継続するだけでなく、プラスアルファで新たなことを採り入れて、自分に刺激を与えるようにしています」
Q.今季、「落ちた」時はありましたか?
「第23節藤枝戦の後はさすがに落ち込みましたね。3失点すべてに絡んでしまった。そこではまだ気持ちを切り替えることができていたんですけど、次の横浜FC戦の前日までレギュラー組に入っていたものの、一気にメンバー外になってしまったんです。その時は結構落ち込みました。でも、落ちてもやるしかなかった。なんとかして、自分を奮い立たせていましたね」
Q.藤枝戦というよりも、翌節に直前でメンバーから外れたことにショックを受けたのですね。
「もちろん、藤枝戦の後も落ち込みましたよ。藤枝戦はキャプテンを託されていましたし、試合前に『この試合で価値を証明しよう』という話をして、期限付きで水戸に来た選手に対しても、『自分のチームだと思って戦ってほしい。それがチームを強くするから』と発破をかけたんです。それなのに、自分が失点に絡んでしまったので、『やってしまった』という感じでした。試合前にそういうことを言いながら、3失点に絡んでしまったことについて、試合後みんなに話をしました。『だけど、俺はこれで落ち込んでネガティブな姿勢にはならないし、もっと厳しくやっていくから』と伝えたんです。そういう思いで練習に取り組んでいたのに、直前でメンバーから外されてしまったことに対して、落ちてしまったところはありました」
Q.そういう経験を経て、また強くなったのでは?
「いい時にはあまりノートを書かないんですけど、逆に落ち込んでいる時にその時の心境を書くようにしているんですよ。何年も前から書いてきたノートがあって、毎回その時にどういうプレーをして、どのように落ち込んだかについて書いていて、そこからどうやって自分を奮い立たせようとしたのかも書いてあるんです。それを読み直して、前向きになる時があります」
Q.過去の悔しさを忘れないようにしているんですね。乗り越える姿がエナジャイズにつながるのでは?
「そうなったら、嬉しいですね」
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「ミッションとビジョンの言葉を体現する人はどういう人なんだろうかと考えた時、『みんなにポジティブな影響を与える』ことを意識しているのに、ネガティブな行動や発言をしていたら、誰にも影響を与えられないと思うんです。だから、常にエネルギッシュに日々を過ごすことを意識しています。『謙虚な姿勢』というのは、試合に出て活躍した選手が偉そうにしていたら、みんなから応援されないと思うんです。その選手の言うことを聞こうとも思わないですよね。だから、常に謙虚な姿勢ながらも、みんなにエネルギーを与える存在になることが理想だと思い、この言葉にしました」
Q.エネルギッシュな行動はどういうことを意識していますか?
「練習中の声がけではネガティブな声を出さず、褒めて前を向けるような声のかけ方を意識しています。行動に関しても、自分に元気がなければ、いい言葉をかけても伝わらないと思うんですよ。だから、常に意欲的な姿勢を出して取り組むようにしています。あとはいろいろ愚痴りたくなる時があるかもしれないけど、そういうことを口にせず、ポジティブな発信だけをしようと心がけています」
Q.「常に感謝の気持ちを忘れない」はいかがでしょうか?
「些細なことでも感謝の言葉を伝えるようにしています。自分にとってちょっとしたことでも、相手は大事な時間を割いてやってくれているかもしれない。ファンやサポーターのみなさんもそうだと思いますし、そういう人たちに対しても常に感謝できる人がみんなにいい影響を与えられると思っています」
Q.「素直な気持ちで向き合う」はどうでしょうか?
「自分が生活してきた中で損得を選ぶとか、相手の年齢で対応を変えるとか、そういう人はあまり好きじゃないんです。自分が得意じゃないから話をしないとか、そういう対応は違うと思うんです。素直というより、表裏なくというか、常に誰に対しても分け隔てなく接したいと思って、この言葉を選びました」
Q.飯泉選手は古巣のチームのファンや関係者の方から今も応援されているように感じます。それは飯泉選手がどのチームにいても、人を大切にしてきたからでしょうね。
「ミッションを決める時、最初に『恩返しをしたい』と伝えたんです。自分が今サッカーできているのも、両親やサポートしてくれた人のおかげだから、そういう方々に恩返しをしたいという思いが強いんです。でも、その時に面談の担当者から『恩返しだと今まで支えてくれた人に限定される』という話をされて、ちょっと違うと感じたんです。自分は限定したくないし、今まで関わってくれた人も関わっていなかった人も多くの人を笑顔にしたい。だから、『恩返し』ではなく、『エナジャイズ』という言葉を選びました。たとえば、このチームには若い選手が多く、そういう選手が試合に出られなくて落ち込んでいる時に支えることも自分の役割だと思っています。ネガティブな状態の選手がいる時、話を聞くようにして、『大丈夫だよ』と励ますようにしています」
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「先ほど話しましたが、スローガンも『関わってくれた人への恩返し』みたいな言葉にしようと思っていたんです。でも、それでは限定されてしまうということで、この言葉にしました。関わっている人を明るくすることは自分が大事にしていることです。ただ、それだけでなく、プロサッカー選手である限り、見てくれる人がいるんです。すべての人と会話ができるわけではないんですけど、それでも、すべての人にエネルギーを与えられるような存在になりたい。そういう広い視野を持って生きていきたいんです。自分のプレーを見て、『自分も頑張ろう』と思ってもらえたら嬉しいですし、自分の存在が誰かの希望になれたら、そこに自分の生きる価値があると思うんです。その意味を込めて、この言葉をスローガンにしました」
Q.どういうプレーでエナジャイズしたいですか?
「自分はうまいプレーやきれいなプレーを見せるタイプではありません。それよりもゴール前で体を張ることやサイズのある選手と体をぶつけて戦う姿を見てもらいたいですし、負けている時にチームを鼓舞して最後まで諦めずに戦い抜く姿勢も見てもらいたいです。そういう姿でエネルギーを与えられるような存在になりたいと思っています」
Q.今年はじめてJ2でのプレーとなっています。どのような印象を持っていますか?
「J2は本当にレベルの高い選手が多い。それこそ、岡山戦で(新井)晴樹が岡山のルカオ選手とぶつかって、相手を吹き飛ばして、晴樹がガッツポーズを見せた場面があったと思うんですけど、あの場面こそエナジャイズだと感じました。見ていて『晴樹、すごい!』と思えましたから。J2やJ1はそういう場面をたくさん作れる環境だと思っています。最近、あまり試合に出られていないですけど、試合に出た時にはそういう姿をたくさん見せられるように頑張りたいと思います」
Q.残り3試合に向けての意気込みをお願いします。
「すべての試合に出場することを目標に準備しています。とにかく最後まで戦う姿勢を貫いて、みなさんに勇気や元気を与えられるように頑張ります」
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