坂上のお不動さんになりたい…秋華賞◎シャトーブランシュ

乗峯栄一

福留元調教助手が開催するホース・セラピー

[写真1]ホース・セラピーのイベントにあのメジロマックイーンで菊花賞を勝った内田浩一が! 【写真:乗峯栄一】

 2年前の10月10日、兵庫県の三木ホースランドパークでホース・セラピーを中心とした「サンクス・ホース・デイズ」というイベントが行われた。
 福留健一さんという調教助手が、5年前、調教中の事故で下半身不随となる大ケガを負う。「一生、車椅子生活か」という辛い心境のなか、障害者馬術や、馬による障害者への癒やしなど、いわゆる“ホースセラピー”というものと出会い、「Reins」(レインズ・手綱の意)という組織を作る。特に角居調教師がその意図に賛同してバックアップ、三木市や、そのほか各馬主、各調教師、各競馬団体など、多くの団体・個人の協賛を得て第1回イベントの開催となった(現在も約1年ごとに日本各地でイベントは継続中だ)。

 ぼくも角居調教師からの勧めもあって、友人を連れて観覧に行った。広大な三木ホースランドの屋内・屋外に色々な競技(障害者馬術競技やオリンピック選手による馬術演技もあった)や家族向けアトラクションが展開されていて、想像以上に大掛かりで、想像以上に賑わっていた。

「あ! メジロマックイーンの内田浩一やないか!」

[写真2]乗峯カメラの前に止まってくれたのはアパパネ以来2頭目 【写真:乗峯栄一】

 その中で、個人的に特に感動したことが一つあった。
「ジョッキー体験コーナー」という屋外アトラクションがあって、「ポップロック」というゼッケンを付けた首の動く木馬が置いてある(“ポップロック”なのに、なぜか芦毛だったが)。家族連れの幼児たちに向けて「ポップロックに乗ってみない?」と満面笑顔で呼びかけるおニイさんがいて雰囲気を盛り上げる。不安そうに乗る子供にヘルメットをかぶせ、鞭を持たせ、「そうそうそう、うまいねえ」と微笑みかけ、「へえ、盛り上げてるなあ、ホースランドの職員なのかなあ?」と思って通り過ぎる。[写真1]

 が、どうも顔に見覚えがある。首ひねりながら通り過ぎて、「あ! 内田浩一やないか! メジロマックイーンで菊花賞勝った」と思い出し、慌ててUターンする。「内田さん(いまは清水出美厩舎調教助手)やろ? 偉いなあ、こんな盛り上げスタッフやって」と思わず握手してしまった。その場にいる子供たちに「このおニイちゃん、GI騎手なんやで」と触れて回りたい衝動に駆られる。
 広い会場で、スタッフとして動いているのは、ほとんどが趣旨に賛同した栗東トレセンの厩舎スタッフたちだったのだ。騎手や厩舎スタッフたちが厩舎の垣根を越えて(おそらく無償で)裏方役をやっていて、会場を盛り上げていて、正直言うと、これに一番感動した。

わがFBはちょっとした内田浩一ブームに

[写真3]ボードの左上、会見出席者の名前にびっくり! 【写真:乗峯栄一】

 内田浩一、高橋康之(一昨年の調教師試験に合格し、来春開業予定)という池江泰郎厩舎所属の兄弟弟子は、わがトレセン歴でも最も早い知り合いなのだが、何となく疎遠になっていた。しかし高橋康之元騎手とは調教師試験を惜しいところで落ちていると聞いた頃から「いや、もうじきだろ、頑張って」てなことを話すようになり、内田浩一元騎手とは、この“サンクスホースデイズ優しげニイちゃん”の話をスポニチ・コラムに書いたり、わがFacebookに写真を載せたりしたことから、再びよく話すようになった。

 特にFacebookでは「90年菊花賞、まだ22歳の若武者・内田浩一がメジロマックイーンで勝った晴れ姿の写真、誰か持ってないかなあ?」と問いかけると、5、6人の人(Facebook でいうところの“友達”)が投稿してくれて、いやあ、オールドファン、内田浩一ファンはいるのだ、そこに内田浩一本人からも投稿があったりして、わが FB(通はFacebookのことをこう言うらしい)はちょっとした“内田浩一ブーム”になった。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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