坂上のお不動さんになりたい…秋華賞◎シャトーブランシュ
秋華賞に勝ちたかったら「坂路上の乗峯」
[写真4]実に謙虚な受け答えだった内田浩一助手 【写真:乗峯栄一】
素人カメラマン乗峯の前で馬を止め、写真ポーズを取ってくれたのは2010年秋華賞前アパパネ以来、実に2頭目だ。感激だ。それにだ。アパパネは秋華賞勝ったし、もしシャトーブランシュも秋華賞勝つようなことがあれば、秋華賞に勝ちたかったら「坂路上の乗峯カメラの前で馬を止めろ」というような密かな風評が出るんじゃないか? [坂路上の乗峯]=[願掛けお不動さん]のような、「いや、ちょっとやめてよ」みたいな「乗峯神格化事件」だって起こるかもしれない。
「もっと大変な内田さんが出るでしょうが」
[写真5]北村友一もしっかり答えていたが、インタビューの後の一言が印象的だった 【写真:乗峯栄一】
GIの場合、有力3頭の調教師・騎手が出てきて共同記者会見がある。GI週にトレセン行くときには「今日の記者会見はどの馬だ?」つまり「今週GIの有力3頭ってのはどれになる?」と考える。ここでの「有力3頭」の予想が当たるかどうかは、本番予想が当たるかどうかの下準備になる。ブックメーカー予想を予想するみたいなもんだ。
2010年のアパパネ、アプリコットフィズ、アニメイトバイオの、栗東なのに「関東馬ア・ア・ア3頭記者会見」があったときには驚いた(さらにレース結果も、その3頭がワン・ツー・スリーを占めた)。“記者会見予想”ももちろん大はずれだった。今年は一応3頭のチョイスは当たった。ちゃんと栗東らしく関西馬3頭であり、デニムアンドルビー、シャトーブランシュ、メイショウマンボだ。でも驚いたのは[写真3]左上、シャトーブランシュの清水出美調教師の代理で内田浩一調教助手が会見するというところだ。驚いて、関係ないのに、こっちの方が若干緊張してくる。騎手時代には記者会見の経験はあるのかもしれないが、調教師代理としては恐らく初めての会見だろう。
「あ、内田さん、記者会見出るんや」と呟いていると「そうやねえ、関東から来てはるんやねえ、騎手の内田博幸さん」などと言ってくる人がいる。「いや、その内田さんじゃなくて、もっと大変な内田さんが出るでしょうが」と答える。
しかも10時15分という、メンバー中最も遅い時間だ。デニムアンドルビーの角居調教師の共同会見も大概時間が遅いが、その角居調教師の午前10時よりさらに遅い。
その角居調教師会見が終わると、失礼なことに報道陣の半分ぐらいがゾロゾロ帰り始める。ほんと、これから、世紀の会見があるというのに。
内田浩一助手は大変謙虚なインタビュー
[写真6]一方の飯田祐史・新調教師はいつものように淡々と 【写真:乗峯栄一】
「なんや、人すくないなあ、角居さん終わったら、みんな帰ったんかいな」ぐらい毒舌吐いて、一発かますかと思いきや、「いえ、ぼくらはただ馬の調子を上げていくだけですから」「はい、それはジョッキーに任せてます」「まあ、それは調教師が考えることですから」と大変謙虚なものだった。
「オレがマックイーンの菊花賞勝たせたの、みんな知ってんのか?」と睨み回すこともなかった。
その場にいた報道陣の半分ぐらい、普通の調教助手だと思ってたんじゃないだろうか? ぼくがマイク奪い取って、強引に紹介すればよかったのかもしれない。
シャトーブランシュ騎乗の北村友一も初めての共同記者会見だったかもしれない[写真5]。インタビューにはしっかり答えていたと思うが、それでも会見が終わったあと、インタビュー時の倍ぐらいの声量で「苦手や、インタビューは」と独り言を言っていたのが印象的だった。
初めてといえば、飯田祐史新調教師も調教師としては初めての会見だったはずだ。というより、厩舎開業前の調教師が、調教師代理としてインタビューを受けるということ自体が前例がないように思う。しかし彼はいつものように淡々と、ときどき微笑みも浮かべて、落ち着いた受け答えをしていた[写真6]。