江幡ツインズ、ムエタイ同時王座取りならず=新日本キック

長谷川亮

史上初の双子によるムエタイ同時王者を目指した江幡兄弟だったがムエタイの壁は厚かった(写真は兄・睦) 【t.SAKUMA】

 新日本キックボクシング「TITANS NEOS XIV」が16日、東京・後楽園ホールで開催された。

 今大会には新日本キックが誇るチャンピオンツインズ、睦(むつき、日本フライ級王者)と塁(日本バンタム級王者)の江幡兄弟が登場。史上初となる双子のムエタイ外国人王者を目指し、この日同時にタイ・ラジャダムナンスタジアムの王座に挑んだ。

江幡・兄は2度目のラジャダムナン挑戦も…

ラジャダムナンスタジアム認定バンタム級王座決定戦に挑んだ江幡ツインズの兄・睦(写真右)は判定1−2で惜敗 【t.SAKUMA】

 まず先陣を切ったのは兄の睦。ラジャダムナンスタジアム認定バンタム級王座決定戦に臨み、フォンペート・チューワッタナと対戦した。フォンペートは江幡兄弟と因縁浅からぬ相手であり、睦と塁、どちらとも対戦するも2連敗。まず兄の睦と2010年7月に対戦するも右ストレートでダウンを喫して判定負けとなり、今年7月には塁と対戦するもやはり3RKOで敗れている。

 睦は今年3月のラジャ王座初挑戦では王者をヒジ打ちで追い込むもあと一歩でベルトを逃しており、今度こそはと、その意気込みは高い。フォンペートは一度降した相手であり、場内の大きな期待を受けて試合が始まった。

 初回からエンジン全開といった様子の睦は左右のローを効かし、得意の縦ヒジも見舞ってフォンペートのおでこをタンコブ状に腫れ上がらせる。快調な睦にKO勝ちの期待が高まったが、フォンペートは3Rに右ヒジを当てて睦をグラつかせ、4Rには徹底して組みに出てヒザ蹴りでポイントをあげる。
 最終ラウンドはパンチの睦と組んでヒザを見舞うフォンペートという図式となって終了し、場内が固唾をのんで見守る中、下された判定は48−47(フォンペート)、48−47(江幡)、49−48(フォンペート)の2−1でフォンペート。

 日本式の見方・採点では勝者であってもおかしくない睦だったが、組んでの展開で後手に回った印象が響いたか、2度目の挑戦でも戴冠はならなかった。

弟・塁の猛攻を受け切り粉砕したスラチャイ

ラジャダムナン・スーパーバンタム級王座に挑んだ江幡ツインズの弟・塁(写真左)はムエタイ王者のひざ蹴りの前に4RKO負けを喫した 【t.SAKUMA】

 判定2−1の惜敗で涙をのんだ兄・睦に続き、大会最終試合(第14試合)には24戦21勝(10KO)3分とプロ無敗を誇る塁が登場し、スラチャイ・シースリヤンヨーティンが持つラジャダムナン・スーパーバンタム級王座に挑んだ。

 兄の睦同様、初回からハイピッチで攻める塁は、左右のローを効かせ、ボディー打ちも嫌がらせ、そしてこれも睦と同じように縦ヒジを決め、スラチャイの額を大きく腫れ上がらせる。
 2Rに入ってもその勢いはいっそう止まらず、スラチャイが組みに来てもカウンターの縦ヒジを突き立てて組みを許さず、右クロス・右アッパーとパンチもクリーンヒットさせる。
 3R、組みに来るスラチャイの動きを読んだ塁は右クロスを突き刺して効かせ、そこからガードを固め防戦一方となったスラチャイに連打をまとめる。KOの期待に場内が沸き立つが、スラチャイは何とか連打から逃れると、追ってきた塁に左テンカオ(相手をつかまずに放つヒザ蹴り)をカウンター。これが効いた塁はここからスラチャイに首相撲で捕まり、立て続けにヒザを浴びせられてしまう。
 4R、スラチャイの首相撲を嫌って逃げる塁だが、スラチャイは許さず執ように追い、左ボディーとヒザの連続攻撃で塁はまず最初のダウン。立ち上がり強打を振るった塁だがスラチャイはこれに空を切らせ、右ボディーストレートで2度目、そして腹から顔へのヒザをコンビネーションで決め3度目のダウンを与えてTKO勝利(4R2分12秒)。

 軽量級での外国人ムエタイ王者という、これまで例のない大きな足跡が2つ同時に刻まれることが期待された大会だったが、終わってみれば懐の深さを見せ接戦で睦を退けたフォンペート、塁の猛攻を受け切り粉砕したスラチャイと、ムエタイの強さ、そして凄みがまざまざと残された一夜だった。

 その他、大会の全試合結果は以下の通り。

■新日本キックボクシング「TITANS NEOS XIV」
9月16日(月・祝) 東京・後楽園ホール

<第14試合 ラジャダムナン・スーパーバンタム級タイトルマッチ 3分5R>
○スラチャイ・シースリヤンヨーティン(タイ/王者)
(4R2分12秒 TKO)
●江幡 塁(伊原道場/9位、日本バンタム級王者)
※スラチャイが王座防衛

<第13試合 ラジャダムナン・バンタム級王者決定戦 3分5R>
○フォンペート・チューワッタナ(タイ/5位)
(判定2−1)
●江幡 睦(伊原道場/6位、日本フライ級王者)
※49−47、49−48、47−48
※フォンペートが新王者となる

<第12試合 ヘビー級 3分3R>
○松本哉朗(藤本ジム/日本ヘビー級王者)
(判定3−0)
●大治ZLS(チームゼロス/J−NETWORKヘビー級3位、RISEライトヘビー級6位)
※30−27、29−27、30−27

<第11試合 63kg契約 3分5R>
○石井達也(藤本ジム/日本ライト級王者)
(判定2−0)
●ハチマキ(PHOENIX/REBELS−MUAYTHAIライト級王者)
※49−48、49−48、49−49

<第10試合 58.5kg契約 3分3R>
○兼子ただし(伊原道場/日本フェザー級2位)
(1R2分27秒 KO)
●デンサーラカーム・シットサイトーン(タイ)

<第9試合 63kg契約 3分3R>
○春樹(横須賀太賀ジム/日本ライト級8位)
(判定2−1)
●ジョニー・オリベイラ(ブラジル/トーエルジム/日本ライト級1位)
※30−29、28−30、29−28

<第8試合 ミドル級 3分3R>
○斗吾(伊原道場/日本ミドル級2位)
(1R1分08秒 KO)
●青木克眞(トーエルジム/日本ミドル級8位)

<第7試合 52.5kg契約 3分3R>
○泰史(伊原道場/日本フライ級3位)
(1R2分31秒 TKO)
●松崎公則(STRUGGLE/WPMF日本スーパーフライ級王者)

<第6試合 ミドル級 3分3R>
△ショーケン(山田ジム/日本ミドル級3位)
(ドロー)
△本田聖典(伊原道場新潟支部/日本ミドル級7位)
※30−29、29−29、29−29

<第5試合 フェザー級 3分3R>
○拳士浪(治政館ジム/日本フェザー級3位)
(判定3−0)
●池野翔(TEN CLOVER GYM/J−NETWORKスーパーバンタム級9位)
※3者29−28

<第4試合 ライト級 3分3R>
○福岡達也(治政館ジム/日本ライト級4位)
(3R1分18秒 KO)
●羽立宏孝(伊原道場稲城支部/日本ライト級6位)

<第3試合 ライト級 3分2R>
○永澤サムエル聖光(ビクトリージム)
(2R1分39秒 KO)
●和己(伊原道場)

<第2試合 フェザー級 3分2R>
○布施木将人(藤本ジム)
(判定3−0)
●レッガラー鉄(ヨックタイジム)
※3者19−17

<第1試合 63kg契約 3分2R>
○梅木裕介(トーエルジム)
(判定3−0)
●川崎みつや(山田ジム)
※3者20−19
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント