データとフィジカルが日本を強くする=世界のサッカーに追いつくために

スポーツナビ

ウルグアイ戦で明らかになったこと

日本の守備陣は、スアレス(左)のスピードやパワーに全く歯が立たなかった 【Getty Images】

 サッカー日本代表は8月15日、国際親善試合でウルグアイに2−4と敗れた。ボール支配率では53.9パーセントと上回りながら、相手の鋭いカウンターに日本の守備は崩壊。結果以上に、ウルグアイの狡猾さやフィジカルの強さは日本を苦しめた印象だ。特に、リバプールに所属するルイス・スアレスは卓越したスキルとスピードはもちろん、当たり負けしない強さでセンターバックの吉田麻也や今野泰幸を翻ろうした。スアレスは181センチと決して小柄ではないが、大柄でもない。しかし、対処した吉田も今野も、途中出場した伊野波雅彦も、その速さと強さに歯が立たなかった。日本は、まだフィジカルで強豪国に太刀打ちできない――。それをあらためて認識させる試合だった。

 しかし今後、日本サッカーを発展させていくためには、フィジカル強化は不可欠。では一体どうすればいいのか。その解決策を探るトークセッションが20日に都内で行われ、元日本代表の名波浩氏や日本代表コンディショニングコーチの早川直樹氏、横浜F・マリノスユースの松橋力蔵監督らがそれぞれの視点で意見を述べた。

 イベントでは、フィジカルの強化に加え、データの有効活用がいかに重要かという例として、2012−13シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝、バイエルンvs.バルセロナの第1戦が取り上げられた。

 まずはこの試合の展開をざっと振り返ってみたい。バイエルンがホームに優勝候補のバルセロナを迎えた一戦。得意のパスサッカーで主導権を握ったバルセロナに対し、バイエルンは組織化された強固な守備と鋭いカウンターで対抗する。そして25分にトーマス・ミュラーのゴールで先制すると、後半にも49分にマリオ・ゴメス、73分にアリエン・ロッベン、82分にミュラーがこの日2点目を決め、大方の予想に反して、バイエルンが4−0でバルセロナを粉砕した。

フィジカルの充実ぶりが際立ったバイエルン

ロッベン(奥)が3点目を決めたシーン。試合終盤に自陣から全速力で駆け上がり、ゴールを陥れた 【Getty Images】

 4点差で完敗したバルセロナだが、ボール支配率(66パーセント)、パス本数(694本)、パス成功率(86パーセント)でバイエルンを圧倒的に上回っていた(バイエルンの上記3項目は、33パーセント、354本、71パーセント)。しかし、データの上で負けていたバイエルンは、「規律に基づいた作戦」(ユップ・ハインケス監督)で、バルセロナにあえてボールを持たせ、堅固な守備ブロックを形成。その結果、バルセロナはボールを保持できても、決定的なチャンスを全く作り出せなかった。

 そしてこの試合で特筆されるのが、バイエルンのフィジカルコンディションの充実ぶりだ。3−0と勝負を決めた73分のゴールシーンは、自陣からのカウンターで右サイドを駆け上がったロッベンが、最後はドリブル突破から決めたもの。その直前、ロッベンは自陣のペナルティーエリア付近にいたが、そこから全速力で、相手陣内の右サイド深くまで上がっている。そのスピードは時速30キロ。終盤に差し掛かった時間帯でありながら、この試合におけるロッベンの最速記録だった。

 また、2得点を挙げたミュラーは、スプリント数が92回、走行距離が11.19キロメートル、最高速度が30.11キロを記録しているが、これはブンデスリーガにおける自身の1試合平均の数値と大きく異なっている(リーグ戦ではスプリント数71回、走行距離9.64キロメートル、最高速度28.69キロ)。この数値を見ただけで、ミュラーがどれだけバルセロナ戦で普段以上の力を発揮したかが分かる。

 この試合の指揮を執ったバルセロナのジョルディ・ロウラ助監督は、以下のように語り、フィジカルの差に敗因を求めた。

「バイエルンは非常に強く、われわれを上回っていた。フィジカルで勝り、長身で体の強い選手がそろっている。われわれはあまりにも多くのスペースを与えすぎたし、フィジカルの弱さも露呈してしまった」

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント