錦織圭、日本テニス普及の顔に就任
テニス普及推進プロジェクトのアンバサダーに就任した錦織 【Getty Images】
テニスの普及へ、錦織に白羽の矢
昨年の全米オープンで、錦織は日本でのテニス人気について質問した地元・米国記者に、こう答えた。
幼い頃から親しんだテニスが、もっとポピュラーなスポーツになってほしい――そう願うのはプレーヤーの自然な気持ちだろう。まして彼は、13歳から「テニス大国」米国のテニスキャンプで腕を磨いた。世界中からプロを夢見る若者が集まるアカデミーで、苦労しながら自分で道を拓(ひら)いた錦織には、後に続く子どもたちに針路を示したいという気持ちも強いに違いない。
その錦織が、JTAが推進する普及推進プロジェクトのアンバサダーに就任した。
昨年度の実態調査によると、現在のテニス人口は373万人とされる。10年前の423万人から50万人も減り、縮小傾向が止まらない。JTAが目指すのはV字回復。3年後に500万人に、10年後には1200万人にテニス人口を拡大することを目標を掲げ、プロジェクトを立ち上げた。国際テニス連盟(ITF)が推奨する普及プログラムを取り入れた「PLAY+STAY(プレイ・アンド・ステイ)普及推進プロジェクト」である。
これを成功させ、一大ムーブメントを起こすには、世界で活躍する日本のホープを前面に押し立てるしかない、と錦織に白羽の矢が立ったのだ。
錦織はPLAY+STAYのコンセプトにも理解を示し、趣旨に賛同。JTAは手始めに錦織をフィーチャーしたポスター製作を企画し、錦織は無償出演を快諾した。そうして、オフ期間に彼が拠点とする米国のIMGアカデミーで撮影を行った。このポスターは、「ダンロップ全日本ジュニアテニス選手権’13 supported by NISSHINBO」で初披露され、その後、JTA主催トーナメントなどで掲示される予定だ。
期待される“第2の錦織圭”の誕生
錦織が登場する”普及ポスター”は2種類 【写真提供:(公財)日本テニス協会】
JTAはPLAY+STAYを最も系統立った普及プログラムであり、キッズテニスなどさまざまな形で試みられてきた普及・導入プログラムの集大成と位置づけ、協会を挙げて推進に力を注いでいる。
PLAY+STAYの「STAY」とは「続ける」という意味。ここにプログラムの大きな特徴がある。
初めてラケットを握った人に、テニスの楽しさを味わってもらうことができないか。これはかなりの難題だ。緩斜面で何度も転びながらスキーを習得するように、テニスも空振りしたり、フェンスオーバーの「ホームラン」を打ちながら徐々に上達するものと考えられてきたからだ。しかし、ラケットとボール、コートの広さを工夫することで、この難問への解答が見つかった。
PLAY+STAYでは、短いラケットと空気圧を下げて飛びにくくしたボール、小さなコートで練習を行う。そうすることで技術習得のスピードが飛躍的に速くなるからだ。
子どもや初心者でもすぐにラリーができるようになるという。したがって、得点を競い合うこともできる。つまり、ビギナーでもテニスを「ゲーム」として楽しめるのだ。また、「できなかったことができるようになった」という成功体験が味わいやすくなる。だから、初めてラケットを握った子どもたち、あるいは大人の初心者が、最初から楽しめて、興味が持続しやすい。これがPLAY+STAYの大きな特徴だ。
子どもたちはプログラムを通して競い合う楽しさ、勝つ楽しさに気付くだろう。指導者は、技術の基礎を身につけた子どもたちに、早い段階から戦術的な指導を取り入れることもできる。したがって、これは選手育成の土台作りにも最適なプログラムと言える。
普及と強化はまさに表裏一体。テニス人口拡大とともに、関係者は子どもたちの中から“第2の錦織圭”が誕生することを夢見ているに違いない。
JTAでは今年度、「ニッケ全日本テニス選手権88th」(11月、東京・有明テニスの森公園)などのJTA公認大会、国際テニス連盟公認大会などでPLAY+STAY関連のイベントを実施。これと並行して、一般のスポーツ愛好者が集まるイベント会場に「体験ゾーン」を設け、PLAY+STAYに触れる機会を作るという。現在までに「スポーツ博覧会・東京2013」(9月、東京・駒沢オリンピック公園)などでのイベント実施が予定されている。
<了>
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