22歳・浅村栄斗が描く新たな“4番像”=好調支える今季始めたふたつの取り組み

中島大輔

「つなぎの4番だよね」

リーグトップの65打点、同4位の打率3割2分9厘と結果を出している浅村栄斗が4番として西武をけん引する 【写真は共同】

 4番に据えられた当初、埼玉西武の浅村栄斗は「自分なんかでいいのかな」と戸惑いを隠せなかった。ホームラン打者ではないと自認し、「自分がこの先4番を打つわけではない」というのが今でも正直な心境だ。

 西武の過去10年間の4番を振り返ると、アレックス・カブレラが長らく務め、2009年からは中村剛也がチームの顔として本塁打を量産してきた。しかし、中村は昨季オフに左膝を手術し、現在も戦線離脱中だ。今季はホセ・オーティズやR.スピリーが座ったが機能せず、5月29日、高卒5年目の浅村に渡辺久信監督は大役を任せた。

「ホームランはそれほど期待していない。つなぎの4番だよね」

 指揮官の期待は良い意味で外れ、浅村は4番に入ってから12本塁打を放っている(7月29日時点)。浅村自身は「4番だからと言って、大きいのを狙ったりもしていない」と言うものの、“地位が人を作る”のも確かだ。4番に入って以降、浅村の意識は変わりつつある。
「チームの4番は最も頼りにされる打順。その期待に応えたいとは思いますね」

 7月7日のロッテ戦で4打数2安打、4打点の活躍を見せると、浅村は自身の“4番像”についてこう話した。
「チャンスで打つのが4番だと思います。チャンスでランナーをかえしてくれると思っているからこそ、監督も4番で使ってくれているんでしょうね。期待に応えないと」

昨季の苦しみ経て結果求める5年目

 プロ入り5年目の今季は、とにかく結果にこだわっている。2安打2打点の活躍でチームの今季初勝利を呼び込んだ3月30日の日本ハム戦後、こんな話をしていた。

「去年みたいな春先の状態になりたくないので、1打席ずつ丁寧に。難しいことだけど、なるべく悩まないように。前の打席のことやエラーも、考えないようにしています」

 昨季は開幕から苦しみ、7月上旬まで打率1割台に低迷した。春季キャンプで左太ももを負傷し、かばいながらプレーし続けたことで左右の足首を捻挫したのが痛かった。土井正博前ヘッド兼任打撃コーチは「しっかりした股割ができていない分、上体で打とうとしている。下半身でバットを振りにいくのをやめられない分、ボールの見境がつかない」と指摘していた。夏場以降に復調して打率は2割4分5厘まで上がったものの、シーズンを通じた活躍は果たせなかった。

1/2ページ

著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント