タヒチがコンフェデ杯でつかんだ“勝利”=世界という大海原に残した航跡
事実上の“世界デビュー”
ナイジェリア戦で大会唯一の得点を挙げたジョナサン・テハウは、国際舞台でタヒチの存在を観衆に刻み込んだ 【Getty Images】
タヒチと聞いて、一般の日本人は何を思い浮かべるだろうか。高名なフランス人画家のポール・ゴーギャンの作品群で描かれたタヒチ女性の姿は良く知られるが、それ以外ではさほどなじみがないというのが正直なところだろう。タヒチは、行政上はフランスの海外領土で、その正式名称を仏領ポリネシアという。全人口のほぼ7割が暮らす首都パペーテを有するタヒチ島は、その名がそのまま地域の通称となっているように仏領ポリネシアの中心地。そんな事情もあって仏領ポリネシアの代表チームは、長らく“タヒチ代表”として国際大会にエントリーしてきた。
タヒチ(FIFAランキング138位)は、オーストラリアのアジアサッカー連盟(AF)転籍後、事実上の1強体制を維持してきたニュージーランド(同57位)に続く2位グループを、同じく仏領であるニューカレドニア(同97位)や、オセアニアサッカー連盟(OFC)主催大会で安定的成績を収めるソロモン諸島(同166位)などと、形成している。そんな中でタヒチは、オーストラリア、ニュージーランドというかつてのOFC2強以外で初めて2012年OFCネーションズカップを制覇し、世界を驚かせた。そして、その快挙が今回のコンフェデ杯でのタヒチ代表の事実上の“世界デビュー”へとつながった。
ベロ・オリゾンテの歓喜
そして、その大きなタスクを彼らは初戦で成し遂げる。ナイジェリア戦の後半54分、CKからFWマラマ・バヒルアがあげたボールを高い打点からMFジョナサン・テハウがヘッドで押しこみ歴史的なゴール。直後の中継画面には、両手を挙げ飛び上がりながら歓喜の雄叫びを上げるタヒチのエディ・エタエタ監督の姿を捉えた。ピッチ上では、殊勲のテハウを囲んだ選手たちが、南太平洋の民の象徴“カヌー”パフォーマンスを披露、歴史的なゴールを祝った。テハウが「(ゴール直後は)頭の中が真っ白になって、きちんとチームメートとゴールを祝うことしか考えられなかった」と言うそのパフォーマンスは、ポリネシアの小さな島国が“世界”と言う大海原に漕ぎ出し、そこに一つの大きな“航跡”を残したことを象徴的に表した。
歴史的ゴールをおぜん立てしたベテランのバヒルアは、チーム唯一のプロ選手としてギリシャ(パントラキコス)でプレー、今大会で初めて母国の代表に招集され、歴史的ゴールのアシストという大仕事をやってのけた。試合後に彼は、自らが演出したゴールと試合を「(ゴールは)ずっと記憶に残るだろう。誰も予測していなかったかもしれないが、僕らは自分たちのサッカーをしてハードに戦うことで、試合全体を通しては難しいとしても、(国際舞台でも)戦えることをアピールできた。(得点は)純粋に素晴らしいことで、誇りに思う」と振り返った。