ゴールドシップ芦毛伝説に新ページ=“正攻法”で圧勝することの意義

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ゴールドシップが宝塚記念V、正攻法で3強対決を圧勝した 【スポーツナビ】

 JRA上半期の総決算グランプリレース、第54回GI宝塚記念が23日、阪神競馬場2200メートル芝を舞台に行われ、内田博幸騎乗の2番人気ゴールドシップ(牡4=栗東・須貝厩舎、父ステイゴールド)が3馬身半差の圧勝でGI4勝目。これまでの競馬とは一変する先行策で『4歳3強対決』を制した。良馬場の勝ちタイムは2分13秒2。

 ゴールドシップは今回の勝利でJRA通算13戦9勝。重賞は2012年GI皐月賞、同GI菊花賞、同GI有馬記念、同GII神戸新聞杯、同GIII共同通信杯、13年GII阪神大賞典に続く7勝目。騎乗した内田博は08年エイシンデピュティ以来となる宝塚記念2勝目、同馬を管理する須貝尚介調教師は宝塚記念初勝利となった。

 3強対決で注目を集めた岩田康誠騎乗の1番人気ジェンティルドンナ(牝4=栗東・石坂厩舎)は、ゴールドシップから0秒6遅れの3着敗戦。蛯名正義が騎乗したもう1強の3番人気フェノーメノ(牡4=美浦・戸田厩舎)は、さらに半馬身差遅れの4着に敗れた。なお、2着には川田将雅騎乗の5番人気ダノンバラード(牡5=栗東・池江厩舎)が積極策で粘りこんでいる。

内田博志願の栗東滞在、深まった絆

深めた絆の勝利……レース後、内田博と須貝調教師ががっちり握手 【スポーツナビ】

 芦毛の新怪物が鮮やかによみがえった。力づくでライバルたちをねじ伏せる姿はまさしく“戦艦”。これこそがゴールドシップ本来の姿。3馬身半という決定的な着差でもって、『3強』論争に明確な答えを出してみせた。

「ホッとしてます。この馬の力をうまく引き出せるように、須貝先生と話し合って普段の調教から乗せてもらって、厩舎のみなさんともたくさん話ができますから、絆もきっと強くなると思っていました。その答えが結果となって表れたことが本当にうれしいです」
 美浦所属の内田博だが、まったく力を出し切れずに5着に敗れた天皇賞・春の二の舞はもう御免と、先週の火曜から自宅に戻らず栗東に滞在。普段の調教からつきっきりでゴールドシップに騎乗し、相棒とのコンタクトを密にしてきた。馬だけでなく、厩舎スタッフとの関わりも深めることで“チーム・ゴールドシップ”の一員として、絆をさらに強固なものに――その成果が最高の形となって実を結んだ。

「天皇賞はすごく悔しい思いをしたんですが、生き物ですから、生きているからこそ負けるときもある。どんなに素晴らしいスポーツ選手も調子が悪くて負けることもあります。それだけ勝負の世界は厳しい」
 まさかの一敗地にまみれた春の盾を振り返り、こう言葉をつないだ内田博。初対決の年度代表馬ジェンティルドンナ、2度の直接対決でいずれも先着を許しているフェノーメノと、強力すぎる同世代ライバル2頭を“正攻法”で打ち倒したことで、前走は決して力負けなどではなかったことを証明してみせたのだ。

「強い馬がするべき強いレースをしてくれた」

正攻法で真っ向勝負、直線坂ではライバル・ジェンティルドンナ(右)を一気に突き放した 【スポーツナビ】

 そう、今回の勝利はただ勝ったのではなく、これだけの相手に“正攻法”で勝ったことがゴールドシップにとって何より大きい。

「真価を問われるレースだと思っていました」と、レース後に胸の内を明かしたのは須貝調教師だ。皐月賞、菊花賞、有馬記念と、勝ったGIはすべて後方からの捲り追い込み。見た目には派手で、この豪快なレースぶりがまたゴールドシップの人気を高めている要因の一つであろうと思うが、調教師自身はこの危うい競馬に不満を残していた。
「どういうレースをするかは内田君とゴールドシップに任せてはいましたが、前に行く競馬もできると、以前から確信していたんです」
 トレーナーの言葉通り、そして内田博も「もともと前に行ける馬」と語っているように、事実として昨年2月の共同通信杯は先行策で後のダービー馬ディープブリランテを撃破している。ところが最近はゲートで後手を踏むために後方策を余儀なくされ、ジョッキーも「どの位置からでも馬の力をうまく引き出せるように乗るだけ」と、その時・その場面での最善策で戦ってきた。

 しかし、天皇賞・春の惨敗がそうであるように、最高レベルの馬が集まるGIではいつまでも捲り追い込みの一手のみでは通用しない場面も出てくる。だからこそ、今ここで後方待機一本やりから脱却する必要があった。
「強い馬がするべき強いレースをしてくれた」と今度は大満足の須貝調教師。内田博も「どんな競馬でもできるということを証明できました。固定した戦法のレースがひとつもないんですが、それがこの馬のいいところなんだと思います」と相好を崩した。

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