CLで証明した「ドイツ時代」への一歩=ブンデス2強が演出した最高の決勝戦

フランソワ・デュシャト

報われた忍耐

あと一歩及ばなかったとはいえ、ドルトムントが見せたパフォーマンスは優勝に値するものだった 【Getty Images】

 ヨーロッパの舞台では、ドイツのクラブが一歩を踏み出すまでには時間がかかった。「50+1ルール(編注:クラブ株の過半数を特定の人物が所有できないようにし、金満オーナーの資金力で外国人選手を買いあさる傾向を抑えためのもの)」により、国外からはブンデスリーガの財政に手を出すことが難しくなった。そうなることで各クラブは資金を賢く使うようになり、ユースシステムを現代的なものにした。

 このリフォームはクラブを前進させるまで時間を要したが、今回のCL決勝が示すように、忍耐は報われた。ファイナンシャル・フェアプレーへの対処も素早く、リーグはタレント確保という点以外にも、マーケティングでも他国からリードを奪い、国際的な活躍へとつながったのだ。そして、欧州中のビッグクラブが招へいを願っていた元バルセロナ監督ジョゼップ・グアルディオラは、バイエルン行きを決断。

 6月1日のDFBポカール(ドイツカップ)でバイエルンはシュツットガルトを相手に3冠を達成する公算が大きく、ここ数週間、なぜバイエルンはグアルディオラを必要としたのかと疑問の声が上がっている。ハインケス監督は今季、チームを成長させて、欧州の頂点へと返り咲かせたのだ。グアルディオラのタスクは、今回の成功の後で「ドイツの時代」を確固たるものとすることになり、この時代においては、ドルトムントも大きな役割を果たすことになる。

ドルトムントの成長を促すバイエルンの復活

 クロップ監督は、ドルトムントを2シーズン連続でドイツの王座へと導いた。11−12シーズンには、リーグ戦をチームカラーの黄色と黒で染め抜くだけではなく、ドイツカップ決勝でバイエルンを5−2と辱めて2冠を達成した。

 2年連続の無冠はバイエルンの怒りに火をつけ、移籍市場での限界ギリギリの動きへとつながり、クラブは突入したシーズンでも史上最速での優勝という記録を打ち立てたのである。最高レベルのパフォーマンスを取り戻したバイエルンが、今季の再現を厭わなければ、それは相乗的にドルトムントをさらなる成長へと駆り立てる。ドルトムントの旅路もさらに続くこととなるのだ。

 クロップ監督は毎年そうしてきたように、今年もドルトムントを成長させてきた。ロベルト・レバンドフスキやマッツ・フンメルスを擁しながら、ビッグイヤーを追う道程では2シーズン連続で涙を流すこととなりはしたが、最終的には自分たちのコンセプトが国際舞台でも通用することを示した。だが、すでにマリオ・ゲッツェの退団が決定し、おそらくそう遠くないうちに2大支柱の一人であるレバンドフスキが続くと思われる。そうなれば、ドルトムントは昨夏にバイエルンがしたような動きをなぞることになるはずだ。

 空気は醸成されている。敗戦の後に、クロップはすでに新たなゴールを定めた。2015年まで待つことなく、ドルトムントは再び欧州の頂点へと挑戦する。2015年、CL戴冠はベルリンで行われることになった。そう、ドイツの首都において。

<了>

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著者プロフィール

1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net

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