打点を挙げれば全勝!西岡剛の勝負力=古巣・ロッテに挑む

ベースボール・タイムズ

チームの雰囲気を変えられる男

猛虎打線をけん引する西岡が打点を挙げた試合は全勝中。チームに勢いをもたらしている。22日からは古巣・ロッテとの初対戦に臨む 【写真は共同】

 2年連続でBクラスに落ちた阪神には、こんな男が求められていた。

『打って、守れて、走れて、そしてチームの雰囲気を変えられる男――』

 リーグ優勝から遠ざかること早8年。かつて金本知憲が加入したときのような刺激がなければ、現状からの脱出が困難なのではないか――そう誰しもが心のどこかで感じただろう昨季の戦いを経て、今季はリーグ2位(5月20日時点)。好調のチームの中心に彼の存在がある。西岡剛だ。

“持ってる男”だ。開幕戦でいきなり猛打賞と活躍しお立ち台に上がれば、4月2日のホーム開幕戦(京セラドーム)では阪神ファンにあいさつ代わりのサヨナラタイムリーヒット。打率3割5厘はチームでマートン、新井貴浩に次いでチーム3位(100打席以上、5月20日現在)。不動のリードオフマンとして、猛虎打線をけん引している。

復活するか、このまま終わるか

 仮に3三振を喫しても4打席目に懸ける。何があろうと常に前へ前へという姿勢を失わない。負け試合ではクラブハウスに続く通路で「僕を叩いといて下さい」と責任を一身に背負う男気も見せる。反骨心の塊のような男だ。それは彼のルーツにも関わっている。
 中学時代、憧れていたPL学園高(大阪)のセレクションを受けるも落選。進学した大阪桐蔭高では、そのショックを「打倒・PL」のエネルギーに変え、主将として甲子園出場を果たした。

 昨季までメジャーに挑戦していた西岡だが、今季、不本意な形で日本球界に復帰した。「アメリカに挑戦して情けない形で帰って来て、復活するか、このまま終わるか、分岐点になる」と、野球人生を左右する勝負の1年に臨んでいる。

和田監督の目指す野球と合致

 良いか悪いかは別にして、一昔前と比べると阪神にはおとなしい選手が多くなった。フロントが西岡獲得に動いた背景には、前述の通り、チームの雰囲気を変えられる新しい風を吹き込んでほしいという思惑もあってのことだろう。その効果はいまさら言うに及ばず。移籍1年目ながら先輩、後輩関係なくチームに溶け込む姿を、和田監督も「雰囲気づくりに欠かせない選手になっている」と評す。もちろんそれはグラウンドで結果を残しているからこそ。そのプレースタイルは和田監督の目指す野球と合致する。

 スキあらば次の塁を陥れる姿勢を見せ、塁上では野手のポジショニングと風向きの確認を怠らず、フラフラっと上がった打球に対しても瞬時の判断で2つ先の塁を狙う。「足があるのでいろんな作戦に絡まれる。とりあえずノーアウトで出塁させたくない」と相手捕手は攻撃のキーマンを警戒する。
 行くべきか待つべきか、勝負どころを嗅ぎ分ける鋭い嗅覚は高い野球センスの証し。走塁革命を掲げるチームの中でもその存在感は際立っている。

打点を挙げた試合は全勝中

 チームは現在、貯金7の2位。大きな連敗を喫することなくペナントレースを戦っている。打線が全体的に乗り切れていない時でもズルズルと連敗しなかったのは、西岡が出てマートンがかえす、という得点パターンが確立されていたからだ。

 西岡が打てばチームが勝つという雰囲気さえ漂い始めている。交流戦前後の試合は特にその傾向が顕著だった。6連勝と波に乗って突入した交流戦だったが、いきなり今季初となる3連敗を喫する。その間の西岡の成績は交流戦直前3試合で14打数9安打だったのに対し、交流戦最初の3試合で11打数1安打。西岡の成績がそのまま試合の勝敗に直結した。実際今季、西岡が打点を挙げた試合は全勝中だ。

 交流戦4戦目の福岡ソフトバンク戦では、ファン、関係者の頭に昨季の交流戦5連敗スタートがちらつき始めていた中、嫌なムードを西岡の一振りで振り払った。
「3連敗で流れが悪かったので、この打席は今まで以上に集中して打席に立ちました」と、先頭打者ホームランを放ち打線に点火。3回までに6点を奪う猛攻で沢村賞投手・攝津正を降板へ追いやった。

 節目節目で大仕事をやってのける切り込み隊長は、交流戦のポイントに「初戦の重要性と出塁率向上」を挙げている。そしてきょう22日、古巣・千葉ロッテとの初対戦、プレーボールのコールをまっさらなバッターボックスの中で迎える。
 注目を集める第1打席、黒いビジターユニホームに身を包んだ背番号7が牙をむく。

<了>

(小中翔太/ベースボール・タイムズ)
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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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