黒田博樹 38歳の成功を支える加齢の妙
ジラルディ監督からの信頼ももはや絶大
今やリーグ最高級の投手へと成長を遂げたヤンキースの黒田、その秘密はどこにある? 【写真は共同】
5月17日にニューヨークで行なわれたブルージェイズ戦で、黒田は8回を2安打1四球で無失点。合計109球で三塁も踏ませず、先頭打者に二塁打を打たれて以降、続く19打者をすべて討ち取り続けるという完璧なピッチングで6勝目(2敗)を挙げた。
「自信はない。次に打たれたら自信なんてすぐなくなりますから。常にびびりながらやっています。それが良い方向に行っているんじゃないかと思います」
試合後、本人はいつも通りにそんな謙虚な言葉を繰り返していた。しかし、これで7戦連続のクオリティスタートで、防御率は1点台に突入(1.99)。防御率はリーグ2位、WHIP(1イニングに出す走者の割合)0.95はリーグ4位といった数字が示す通り、その投球内容の見事さは誰の目にも明らかだ。
「速球、スライダー、スプリッターという3つの球種がすべて良かった。長いイニングを投げ、ブルペンを休ませてくれる。(黒田は)昨年から通じて私たちを感心させ続けてくれている」
ブルージェイズ戦後のそんな言葉が示す通り、ヤンキースのジョー・ジラルディ監督からの信頼ももはや絶大。悪いときは悪いなりにまとめ、好調時には相手を完璧に封じ込め、常にイニングを稼いでくれる。指揮官にとって、こんなに頼りになる投手はいないだろう。
「サイ・ヤング賞候補のように投げている」
しかし振り返ればわずか1年前、昨季最初の9先発を終えた時点での黒田は3勝6敗、防御率4.56という二流の成績だった。筆者も、「やはり投高打低のナ・リーグ西地区で守られて来た投手か」と疑ったことを否定しない。それが今では、「サイ・ヤング賞候補のように投げている」とESPN.comニューヨークから評されるまでになった。
昨季以降、7イニング以上投げて無失点のゲームは9度を数え、これはクレイトン・カーショウ(ドジャース)、フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)と並ぶメジャー最多。5月14日の「ニューヨーク・ポスト」紙上では、「昨季以降の黒田の防御率3.13は、200イニング以上投げた投手の中ではジャスティン・バーランダー(2.52)、ヘルナンデス(2.76)、デビッド・プライス(3.00)、クリス・セール(3.01)に次いでメジャー5位」というデータも紹介されていた(注/数字はすべて14日時点)。
これらの実績からは、ここ2年の黒田がいわゆる“球界のエース”たちと比べても遜色ない投球を続けて来たことが見えて来る。