涙の恩返し……幸四郎、メイショウに贈るオークス勝利

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メイショウマンボがオークス制覇、武幸四郎は7年ぶりのGI勝利となった 【写真:中原義史】

 JRA3歳牝馬の頂点を争う牝馬クラシック第二冠目、第74回GIオークスが19日、東京競馬場2400メートル芝を舞台に行われ、武幸四郎騎乗の9番人気メイショウマンボ(牝3=栗東・飯田明厩舎、父スズカマンボ)が優勝。中団のイン待機から最後の直線は外に持ち出し、一気の差し切りで樫の女王の座を手にした。良馬場の勝ちタイムは2分25秒2。

 メイショウマンボは今回の勝利でJRA通算7戦4勝。重賞は今年のGIIフィリーズレビューに続く2勝目。騎乗した武幸は2006年菊花賞(ソングオブウインド)以来となるJRA・GI4勝目。また、同馬を管理する飯田明弘調教師は厩舎開業25年目にしてうれしいGI初勝利となった。

 一方、1馬身1/4差の2着には戸崎圭太騎乗の5番人気エバーブロッサム(牝3=美浦・堀厩舎)、さらに2馬身差の3着に内田博幸騎乗の1番人気デニムアンドルビー(牝3=栗東・角居厩舎)が入線。二冠を狙った3番人気の桜花賞馬アユサン(牝3=美浦・手塚厩舎、丸山元気騎乗)は、3着から1馬身1/4遅れの4着に敗れた。

桜花賞惨敗から逆襲の末脚、メイショウマンボ樫戴冠

桜花賞では不発だった自慢の末脚が府中の直線で爆発! 【写真:中原義史】

 桜花賞2ケタ着順からのオークス戴冠は1971年カネヒムロ以来、42年ぶり史上4頭目。鮮やかな逆襲劇のヒロインを巧みにエスコートした武幸四郎は、冷静な表情、淡々とした口ぶりながらも、自身7年ぶりとなるGI美酒に、やはり喜びを隠せなかった。
「いや、もう、とにかくうれしいですね。GI3勝目を挙げさせてもらってから、だいぶ時間があいてしまったので本当にうれしいですね」

 レースはちょうど中団、内ラチ沿いの位置取り。内枠を引いたときから考えていた通りのポジション、という絶好の展開だったが、その一方で幸四郎には他のことを考える余裕がまったくなかったという。
「きょうはちょっと危ないくらいレース前は馬がイレ込んでいました。ゲート前でもパニックになっていました」

 どうしようもない不安を抱えてのゲートイン。しかし、発馬してからは抜群の行きっぷりな上、鞍上の指示にも従い向こう正面で折り合いピタリ。最後の直線でもスムーズに外へ持ち出すことができ、桜花賞では不発に終わった自慢の末脚を今度は存分に発揮することができた。
「レース前は、今回は無理かなって思うくらいのイレ込みでしたけど、競馬は本当にすべてがうまく行きましたね。厩舎スタッフが極限に仕上げてくれたんだと思います。馬も本当によく頑張ってくれました。桜花賞で伸びなかった分、きょうは走ってくれましたね」

不振でも支え続けてくれたオーナー・松本好雄氏

幸四郎を支え続けた松本オーナー(左)にとっても格別の勝利だろう 【写真:中原義史】

 7年ぶりのGI勝利の味をかみしめながら、何度も笑顔をこぼした幸四郎。しかし、自身の勝利だけでこれほどの喜びが沸き起こったわけではない。メイショウマンボのオーナー、松本好雄氏の馬で勝てたことが何よりうれしかった。

「自分の成績が悪い時にも支えてくれた方。本当にうれしかったですね」

 騎手デビューした翌日、初勝利が重賞勝ち(GIIマイラーズカップ、オースミタイクーン)という離れ業をやってのけた競馬一家のプリンスも、今年35歳を迎える。騎手としては高すぎる177センチの長身のハンデをモノともせず、毎年のように重賞を勝ち、勝利数も順調に50〜60勝前後をキープしていたが、ここ数年は若手の台頭にも押され勝利数は激減。重賞勝利さえ08年以来遠ざかっていた。そんな幸四郎を、松本オーナーは変わらずバックアップし続けてくれていたのだ。

「もっと言うと、自分がお年玉をもらっていたような子どもの時からですからね(笑)。デビューした年もたくさん乗せていただきましたし、本当、ずっとお世話になっている方です」

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