モイズ就任がユナイテッドにもたらす影響=注目される香川の起用法とルーニーの去就
ファーガソン監督の後任としてマンU監督に就任したモイズ氏 【Getty Images】
無名の選手を安価で獲得し、ポテンシャルを引き出す
ルーニーに代表されるように、モイズの薫陶を受けて飛躍した選手は多い。デンマーク代表のトーマス・グラベセン(すでに引退)はエバートンでの活躍が認められ、レアル・マドリーにステップアップ。レアル・ソシエダでポジションを確保していなかったミケル・アルテタを期限付きで獲得(のちに完全移籍)すると、チームの絶対的な司令塔へと育て上げた。アルテタは、11−12シーズンに多額の移籍金を残して、アーセナルへと旅立っている。チャンピオンシップ(2部リーグ)のミルウォールに所属していたオーストラリア代表のティム・ケーヒル(現ニューヨーク・レッドブルズ)は、加入後すぐにチームの攻撃の要となり、プレミアリーグで計56得点を挙げた。
現在のチームにもベルギー代表のマルアン・フェライニや、イングランド代表のレイトン・ベインズら、ビッグクラブのターゲットとなっている選手がいるが、彼らもまたエバートンに移籍する前は無名の存在だった。財政面の問題で大型補強ができない以上、限られた予算で安い選手を獲得し、彼らのポテンシャルを最大限発揮させることで、チーム作りを行う。これがモイズという監督の特長だ。
気になるルーニーとの関係
しかし、懸念点がないわけではない。とりわけ、現役時代を通じて世界的ビッグクラブを一度も経験したことがないモイズが、偉大なる前任者の後を継ぐというのは並大抵のことではない。ましてやユナイテッドには各国の代表選手が多く名を連ねている。チーム戦術はもちろんのこと、求心力もこれまで以上に求められるはずだ。
気になるのはルーニーとの関係。前述の通り、ルーニーからすれば、自分をプレミアリーグの舞台にデビューさせてくれた恩人にもあたるはずなのだが、以前発表した自叙伝において「モイズは自分を妬んでいた」などという批判的な記述から、訴訟問題に発展した過去を持つ(結果はルーニーの敗訴)。エバートン退団もモイズとの関係悪化が原因のひとつと言われており、再び同じチームとなることで、混乱が起きないとも限らない。案の定、『デイリー・ミラー』紙をはじめとした現地メディアは、「モイズはルーニー放出を準備している。代わりにフェライニ獲得を希望」と報じている。「ルーニーも移籍を志願した」と伝えられており、マンチェスターを離れることが現実味を帯びてきた。これまではうわさがあがるたびにファーガソンが火消しを行い、事なきを得てきたが、監督交代のタイミングを機に、新たな挑戦に向かうことも十分考えられるだろう。