モイズ就任がユナイテッドにもたらす影響=注目される香川の起用法とルーニーの去就

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香川にとっては試練のシーズンに

香川にとって試練のシーズンとなるのは間違いない。指揮官を納得させる結果を出せるかがカギとなる 【Getty Images】

 香川真司にとっても試練のシーズンとなるかもしれない。モイズがエバートン時代に見せていたサッカーは、良くも悪くも古きイングランドスタイル。屈強な選手を前線に並べて、後方からのキック&ラッシュで肉弾戦もいとわない。リバプールのスティーブン・ジェラードは昨年10月の対戦後、「彼らはGKに渡して、ロングボールを放り込むばかりだった。サッカーをしようとしたのは1チームだけだったよ」とモイズの戦術を批判し、物議をかもした。繊細なボールテクニックと、パスワークからの切り込みを武器とする香川にとっては、あまり相性の良い戦術とは言えない。

 とはいえ、モイズもあまりに性急な改革は行わないはずだ。ユナイテッドにはファーガソンが築き上げてきた歴史がある。この偉大なる前任者がフロントに残る以上、無用な混乱を招かないためにも、これまでの路線を踏襲しつつ、香川の生かし方を探っていくことだろう。また、戦力に限りがあったエバートン時代とは異なる戦術を採用する可能性も考えられなくはない。

 それでも、残された猶予はいままでより確実に少ない。香川はファーガソンの要望によって獲得した選手。自分が求めた選手に期待するのは当然のことで、ファーガソンは適応に苦しんでいた香川を常に擁護してきた。今後はその後ろ盾をなくしたことで、これまで以上に結果が求められるはずだ。フェライニの獲得が現実になれば、ポジション争いはさらにし烈を極める。その意味でユナイテッドで迎える2年目は、今季よりさらに厳しい戦いが待ち受けている。

指揮官の大型移動が起きそうな来季

 とにもかくにも、全世界に衝撃を与えたファーガソンの電撃退任はサッカー界にとって、新たな歴史の幕開けとなった。ファーガソンは公式HPに「デイビットは素晴らしいインテリジェンスと、仕事に対する情熱を持った人物。このクラブの監督として求められる素質をすべて兼ね備えていることに疑いの余地はない」と、モイズに対する期待を語っている。ユナイテッドのリオ・ファーディナンドは、『ガーディアン』紙に「彼はとても正直な男で、エバートンでファンタスティックな仕事をしていた。ユナイテッドで一緒に働くことになんら問題はない」とコメント。OBのヘニング・ベルグも「良い選択だったと思う。モイズはファーガソンと似た監督だ。彼はエバートンで、限られた戦力をうまく使いこなせることを証明した。ユナイテッドでも同じ手法でチームを高みに導いてくれるだろう」と話した。このように概ねモイズの就任は好意的に受け止められている。

 来季はバイエルンの監督にジョゼップ・グアルディオラが就任し、レアル・マドリーもジョゼ・モリーニョ監督の退任が濃厚。チェルシーはすでにラファエル・ベニテス監督の退団が決定しており、パリ・サンジェルマンもカルロ・アンチェロッティ監督がチームを去る公算が高い。例年になく大物指揮官の大移動が行われそうだ。そのなかでも28年ぶりに監督を交代したユナイテッドの戦いぶりは、否応なしに注目されるだろう。モイズは自身にのしかかる多大なプレッシャーに負けず、クラブに再び黄金時代を築けるのか。今から来季が楽しみである。

<了>

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