ラグビー日本代表、ウェールズとの激闘史=6月対戦の欧州王者と長年続く特別な関係
油断なし、万全の準備で来日するウェールズ
ラグビージャーナリストの村上晃一氏が進行を務めた 【スポーツナビ】
小林氏「ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ(※イングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランドの代表選手から構成された「ライオンズ」の愛称を持つオールスターチーム)に多くの選手が選出されてしまいますが、負傷して6カ国対抗に出場していなかったスタンドオフのリース・プリーストランドや、フランスで活躍するジェームス・フックなど多くのビッグネームが出場します(※5月1日に発表されたウエールズ代表の日本遠征向け32名のトレーニングメンバーからフックは外れた。今年の欧州6か国対抗選手権で活躍したスタンドオフダン・ビガーがメンバーに入っている)」
村上氏「主力選手はいませんが、とても強力なメンバーですね。また、サントリーのストレングス&コンディショニングコーチの方が6カ国対抗の際、ウェールズのトレーニングに帯同されましたよね?」
大久保監督「1週間ほど帯同しました。食事を含めて世界でトップレベルのトレーニングをしていると思います。マイナス70度くらいのリカバリー施設を使っていますね。通常のアイスバスの何倍も(疲労回復に)効果があると言われています。激しいトレーニングをしていますし、日本の6月が暑いのはわかっているので、今から準備すると日本遠征で監督を務めるロビン・マクブライドが言っていました」
村上氏「では、油断して来てくれませんね(笑)」
大久保監督「1月にもロビンと会いましたが、相当気合が入っていましたね。そこにエディー(ジョーンズHC)もいましたが、顔が笑っていませんでした(笑)日本としては、もちろんテストマッチなので、勝つことにこだわると思います。菅平であったときは『まずはマッスル』と言っていました。15年W杯で勝つために、逆算してフォワードの筋力アップを考えているようです。強いウェールズに対して、しっかりとトレーニングをしながら戦うという形になると思います」
ラグビー界全体で考えるべき若手の育成法
深い知識を披露したラグビージャーナリストの小林深緑郎氏 【スポーツナビ】
――日本の場合は多くの選手が大学に進学します。ウェールズではその年代から代表にデビューしていますが、日本のシステムについてどう考えていますか?
小林氏「大学に入って休学して(ラグビーに専念する)という環境がないので、変えることはとても大変だと思っています。4年で卒業するのではなく、スポーツだけではないさまざまな経験をできる制度がないといけないと思っています」
大久保監督「18歳からは選手として伸びる時期で、良いトレーニングと良いコーチングを受けることは、日本ラグビーを変えるためには重要だと個人的には思っています。一企業や一大学だけで改革できるわけではないので、日本ラグビー界全体で考えないといけません」
村上氏「エリート選手をどう育てるかということだと思います。留学させるなど、U−17といった世代から世界と戦えるように、協会がリーダーシップを発揮するべきだと思います」
大久保監督「サントリーのジョージ・スミス(元オーストラリア代表主将)は17歳からプロですが、彼は17、18歳のころから経験のある選手たちとラグビーやリーダーシップを学んできたわけです。彼は32歳になりましたが、若手選手たちを指導していて、良い循環ができています。このように、ラグビーで自立できる環境を整える必要があるかなと思います。今年のジュニア・ジャパンを見ても、才能ある若手選手が多くいますよね。高いレベルで競争できる環境に身を置くことが才能を引き出すと思っています。少しもどかしい現状がありますね」
――ウェールズ戦を観戦する予定です。ホームチームのファンとして、どのように振舞うべきでしょうか? 例えば、プレースキックの際にはプレッシャーをかけてもいいのでしょうか?
小林氏「プレースキックの際にはプレッシャーをかけてはいけないことになっています。フランスと南半球はやりますが、イングランドでは静粛にするようにと何度も通達が出ています。ラグビーではあまりやらないほうがいいのではないでしょうか(笑)キックの際にはシーンとするのが、一番のマナーです」
<了>
三氏に聞く「理想の2019年W杯とは」
小林氏「有名な国同士ではない試合で観戦に来てもらうためには、ひと工夫が必要かなと思います。来日するチームとの接点をいかにもってもらうかが大事ですよね。自分たちの身近にいるチームとして応援してくれる人を増やさないといけないと思います」
大久保監督「『勝つ』ということだけですね。大観衆で埋まったスタジアムの中で、日本代表にプレーしてもらいたいとは思います。ただ、勝つ期待があるからこそ、お客さんが足を運んでくれるわけですからね」
協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会