スペイン2強は奇跡を起こせるのか=躍進するドイツ勢に秘められた可能性
伝統の力強さに新たな要素が加わる
バイエルンはホームでバルセロナに大勝。チームが秘めるポテンシャルは相当なものだ 【Getty Images】
バイエルンとドルトムントが手にした大勝は、ある意味でユーロ(欧州選手権)2008決勝、2010年ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会準決勝で敗れたドイツ代表がスペインに果たしたリベンジだと言うことができる。
近年ドイツでは、足元の技術に優れたトルコやポーランド系移民2世の選手が多数台頭してきたことで、伝統の力強さに新たな要素が加わってきた。1996年のユーロ制覇から準優勝に終わった02年の日韓ワールドカップまで、ドイツのフットボール界はこうした社会的背景がもたらしたプレースタイルの変化を遂げるための移行期にあったと言えよう。そしてその変化を明確にピッチ上で示したのが、その後ドイツ代表の指揮をとったユルゲン・クリンスマンとヨアヒム・レーブの2人だった。
バイエルンが秘めるポテンシャル
だが今回、着々と力を付けてきたバイエルンとドルトムントがついにスペインを代表する2チームを実力で上回るに至った。
ジョゼ・モリーニョ率いるインテルに敗れた09−10シーズンの決勝しかり、チェルシーをあと一歩のところまで追い詰めた11−12シーズンの決勝しかり。何年も前から史上5度目のCL制覇が手の届くところまで来ていたバイエルンは、悲願のタイトルを目指してチームの機能性に磨きをかけてきた。
今季限りで退任が決まっているユップ・ハインケス監督の後を継ぎ、ジョセップ・グアルディオラが新指揮官への就任オファーを受け入れたことは、現在のバイエルンが秘めるポテンシャルを象徴する出来事だった。プレミアリーグを筆頭に多数のビッグクラブからオファーを受ける中、グアルディオラは自らバイエルンを選んだからだ。ドルトムントのスター、マリオ・ゲッツェがバイエルン移籍を決めたのも同様の理由だろう。
レアル・マドリーには希望が残っているが
ドルトムントは1勝1分けと上回ったグループリーグでの対戦に続き、準決勝でもホームでレアル・マドリーに圧勝した。そのスピーディーかつ緩急をつけた正確無比な連係プレー、そしてロベルト・レバンドフスキーの決定力を見れば、彼らがスペインの2強に上回っていることは誰の目にも明らかだ。
3−0以上の勝利が逆転の条件だが、まだホームの第2レグを前にしたレアル・マドリーにはわずかながら希望が残っている。とはいえドイツでの第1レグを振り返れば、4−1というスコアが両チームの実力差を正確に表したものではないことが分かる。あの日レアル・マドリーで最も輝いた選手はディエゴ・ロペスであり、彼の好守がなければさらに点差が開いていた可能性もあったからだ。