スペイン2強は奇跡を起こせるのか=躍進するドイツ勢に秘められた可能性

深刻な問題はプレーの停滞にある

サイクルはまだ終わっていない。バルセロナはメッシ(右)の出来がカギを握っている 【Getty Images】

 一方、バイエルンに0−4と大敗したバルセロナについては、多くのメディアがミランに0−4で敗れた94年のCL決勝を引き合いに出した。ヨハン・クライフ率いる“ドリームチーム”が崩壊するきっかけとなったあの試合と同様に、「今回の大敗もサイクルの終わりを示す象徴的出来事であり、チームは改革の時を迎えた」と、報じはじめたのである。

 確かに、バルセロナがこれほどまでにあらゆる側面で歯が立たなかった試合はグアルディオラが監督に就任した2008年以降、おそらく初めてのことだ。

 アリアンツ・アレナ(バイエルンの本拠地)のセンターサークル周辺に不自然なほど大量の水がまかれていたこと、バイエルンが決めた4ゴールのうち少なくとも2ゴールは誤審の助けがあったことなど、この試合には議論に値する“不可抗力”がいくつか存在していた。だが、バルセロナの選手が誰一人としてそれらのことを訴えようとしなかったのは、彼らが完敗を認めた証拠だった。

 頼みのメッシは結局、フィジカルコンディションの回復が間に合わなかった。彼は試合開始の数分前にクラブがケガからの回復を発表するという奇妙な形で先発出場したものの、ピッチではまだ全力で戦える状態にはないことをあらためて証明するにとどまった。

 ティト・ビラノバ監督の病気再発、相次ぐ負傷者、アレクシス・サンチェスやダニエウ・アウベス、セスク・ファブレガス、ペドロらの不調など、今季のバルセロナはさまざまな障害に苦しんできた。しかし何よりも深刻な問題は、毎試合ボールポゼッションではライバルを圧倒しながら、ゲーム支配をスコアに反映させられなくなったプレーの停滞にある。

今のところサイクルは終わっていない

 早くも優勝まであと一歩に近づいたリーガ・エスパニョーラでの成功は、もはやCLでのそれを保障するものではない。セルティック戦やミラン戦の敗戦、2試合共に勝ち切れなかったパリ・サンジェルマン戦、そしてミュンヘンでの大敗は、何かを変えなければならないことを高々と訴えている。

 とはいえ、それがサイクルの終わりを示しているわけではない。先日アンドレス・イニエスタは言っていた。

「サイクルの終わりとは、チームが何年も勝てなくなり、過去に勝利を手にしてきた選手たちの多くがクラブを去った時のことを示すものだ」

 彼の言葉通り、今のバルセロナのサイクルはまだ終わってはいない。少なくとも、今のところは。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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