戦力外の宇佐美貴史、明らかだった問題点=キャリア修正に求められること

フィジカルとドイツ語に苦しむ

問題視されたのがフィジカルとドイツ語。最後まで改善が見られなかった 【Bongarts/Getty Images】

 そうした声は、すでにミュンヘン時代から聞こえていた。「フィジカル面の不足解消に取り組んだなら、我々を助けることができるだろう。だが貴史からは、コンディションが最高だとの印象を受けることがない」とバベルは話した。「論理的な話だ。バイエルンでは、負荷を受けることがなかったのだからね。ほとんど出場することはなかったし、それほど練習量も多くなかった。バイエルンはCLのせいで、遠征に出ていることが多かったからね」。

 そのバベルのクビが飛んだのは、昨年12月のことだった。現在グロイター・フュルトの監督を務めるクラマーが、暫定監督として後を継いだ。だが、彼は宇佐美に信頼を置くことはなかった。それは同僚のホセルに対しても同様だった。ともにドイツ語を話せなかったからである。「選手は自分がしなければならないことを、理解しておく必要がある。我々には、たった3日間しかなかった。2人が遅れをとっていたことは、練習から見て取れたはずだ。その他の選手は、何でももっと早く理解した。我々は積極的な走りのルートというものを整える必要がある。さもなくば、むなしい走りとなってしまう」。これが彼の言い分だった。

 クルツは、ホッフェンハイムを降格から救うために招へいされた。かつてカイザースラウテルンを率いたこの監督は、宇佐美に可能性を見いだしはしたが、それをすくい上げることはしなかった。クルツは「貴史の強みはドリブルにある。調子が良ければ、内へと切れ込み、強烈な右足でのシュートを狙える」とポジティブな姿勢を見せていた。少なくとも、7回は宇佐美を起用したのだ。

5人の監督の下で成功を収められなかった事実

 驚くべきことに、ホッフェンハイムは再度監督を代えるという決断を下した。これに伴い、宇佐美はまたも新しいシステムに慣れる必要に迫られたのだ。スポーツディレクターのアンドレアス・ミュラーは宇佐美の買取にもオープンな姿勢だったが、戦術家として知られる今季4人目の監督となったギズドルは、宇佐美のほかにフィリップ・マルバシッチ、アフリー・アクア、ルイス・アドビンクラを自身の計画からはじき出した。「現実的に、残りの4試合で彼らにチャンスがあるとは思えない」。かつてラルフ・ラングニックのアシスタントを務めた男は、代わりに3人のユースチームの選手を引き上げた。クラブは、270万ユーロ(約3億4600万円)で宇佐美を買い取る機会を見送った。

 今回、宇佐美へのインタビューはかなわなかった。代わりに彼の代理人の、「宇佐美は欧州やドイツに残りたいと思うだろう」とのコメントが出ている。おそらく、来季も宇佐美はドイツに残ることになるのではないか。ブンデスリーガからのオファーはあるだろう。我々は、宇佐美がもっと良いクラブを選ぶことを願うばかりだ。

 彼は学び、自分自身のために汗を流し、正しい姿勢というものを見つけ出す必要がある。ドイツ滞在歴は、決して長くはない。だが、5人の監督の下で成功を収められないとなれば、その事実は何事かを物語っているというものだ。

<了>

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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