戦力外の宇佐美貴史、明らかだった問題点=キャリア修正に求められること
ポテンシャルに疑いの余地はなかったが
戦力外となった宇佐美。監督が代わるたびに序列を落としていった 【Bongarts/Getty Images】
今季赴いたジンスハイム(ホッフェンハイム地区がある都市)では、すべてが上向くはずだった。
宇佐美は2011年のバイエルン・ミュンヘンへの移籍で、大きすぎる期待を抱いてしまった。そのポテンシャルに疑いの余地はなかったが、それ以上に強かったのが自己主張である。実際にユップ・ハインケス監督は、彼をアリエン・ロッベンのお得な代役に仕立てようとした。この新戦力は両足で力強くボールを扱うことができ、プレシーズンに見せたパフォーマンスで技術の高さを証明すると、バイエルンサポーターからも大きな信頼を寄せられた。だが指揮官が信用したのは、公式戦5試合、合計で195分間のみだった。
もちろんバイエルンで花開くことができなかった期待の若手は、宇佐美だけではない。ドイツ語を話せないティーンエイジャーが新しいサッカー文化に入ってきたのであり、Jリーグからいきなり世界有数のクラブに入ってしまったことが、彼のタスクをさらに困難なものにした。宇佐美はドイツの規模の小さなクラブで、もっと落ち着いた環境に身を置くことも考えたが、周囲はバイエルンでの活躍を期待した。
宇佐美がよろしくないアドバイスに影響されてしまったと言えるだろうか? バイエルンの魅力とサラリーの高さに屈服してしまう選手は多い。現状で言えば、ドルトムントでチャンピオンズリーグ(CL)を制するチャンスがあるドイツ代表のマリオ・ゲッツェでさえも、バイエルン行きを望んだ。宇佐美の成長のためには、もっと小さいクラブの方がよかったことだろう。特に彼の年代では、毎週プレーすることが通常は必要とされる。
クラブが新監督を迎えるたびに序列を落とす
机上では、宇佐美にとっては理想的なクラブだった。だが、何百万ユーロも費やせば、高い期待も付随してくる。目標に到達できなければ、カオス(混沌)がスタートするだけだ。
センセーショナルなブンデスリーガ昇格の後、ホッフェンハイムは初年度である2008年に1部リーグで首位に立つこともあった。だが現在、わずか人口3000人の村のクラブの議題に上るのは、降格への恐れとその対抗策である。
マルクス・バベル、フランク・クラマー、マルコ・クルツ、マルクス・ギズドルと、宇佐美は今季、すでに4人の監督の下でプレーしている。さらにはスポーツディレクターも、3人目を迎えている。このパニック的なリアクションは、クラブの崩壊を避けるべく考え出された方策だった。だが実際には、多くの人員配置の変更は、事態悪化の加速を招いただけだった。
クラブと宇佐美の今季における浮き沈みは、軌を一にする点が多い。シーズン序盤には多くの試合で先発した宇佐美だが、クラブが新監督を迎えるたびに序列を落としていった。ホッフェンハイムが、リーグで順位を落としていくように。
「彼のステップを見て、私は彼のサッカーレベルに全面的に納得した」。マルクス・バベルはシーズン序盤、宇佐美のポテンシャルについてこう語った。この監督の下では、宇佐美は主に左サイドで起用された。
「この子はすごい。ピッチ上では知的であり、ボールを持ったり、ドリブルをすれば力強い。前線のあらゆるポジションをこなすことができるんだ」と評したバベルだったが、守備の弱みも指摘していた。特に問題視したのが、攻撃から守備へと移行するプレーである。