さいたまダービーが持つ国際基準とは=浦和と大宮の間に生まれた新たな因縁

加藤康博

ダービーで18戦連続無敗の新記録

大宮はズラタン(中央)のゴールで浦和に勝利。連続無敗記録を18試合に伸ばし、J1新記録を達成した 【写真は共同】

 大宮アルディージャのJ1新記録となる18試合連続無敗がかかるだけでなく、リーグ2位(浦和レッズ)と3位による上位対決としても注目が集まった20日のさいたまダービー。大宮のホーム、NACK5スタジアムは過去最高となる13,016人の観客で埋まった。結果は大宮が1−0で勝利。2009年に鹿島アントラーズが作った17試合連続無敗記録を更新するとともに、浦和を抜いて2位に浮上した。

 最終ラインを高く押し上げることでキープされる大宮のコンパクトな布陣は、この日も機能した。浦和の攻撃の起点となるDF陣とMF阿部勇樹、鈴木啓太に対し、大宮はボランチのMF金沢慎、青木拓矢が激しいプレスをかけ、パスの出どころを封じる。前線の2トップも執ようにボールを追い、浦和の攻撃を抑え込んだ。

 大宮優位で進んだ前半アディショナルタイム、浦和のDF那須大亮が出血の治療のため、一時ピッチ外に出ると、大宮はそのすきを突き、左サイドのスペースに走り込んだMF渡邉大剛がグラウンダーのクロス。ゴール前に詰めていたFWズラタンが右足で押し込み先制する。

 後半はほぼ一方的に浦和の攻撃となったが、大宮守備陣はラインを下げ、完全に引いた布陣へと転換。攻めあぐんだ浦和は横や後ろへのパスで組み立て直そうとする場面が増え、最後までゴールネットを揺らすことなく試合終了のホイッスルを聞いた。

「この記録は大きなクラブになるきっかけに」

 浦和にとって不幸だったのは、大宮相手に過去4ゴールを奪っているとMF原口元気が、前半27分いう早い時間帯で負傷交代したことか。縦への突破力だけでなく、今季は1トップのFW興梠慎三を追い越すプレーで攻撃にダイナミズムを与えていたが、この交代で攻め手をひとつ欠くことになってしまった。興梠ひとりであれば大宮守備陣もオフサイドの網にかけるのが容易になる。この日、大宮は7つのオフサイドを奪っている。

「相手がコンパクトに来ることは分かっていたし、その準備もしていたが、前半は慎重に入り過ぎてしまった。リードされた後はゴール前のラストパス、そしてシュートで落ち着きがなかった。非常に痛い敗戦だが、その責任は私にある」と浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督はうなだれた。

 対照的にゲーム前は無敗記録に全く興味を示さなかった大宮のズデンコ・ベルデニック監督は試合後、「やっと自分たちがいいプレーをし、力があることを信じられるようになった。われわれのように大きくなく、まだ何も成し遂げていないクラブにとって記録は大きな意味を持つ。この記録は大きなクラブになるきっかけになるだろう」と静かに胸を張った。この1週間、記録のことを口にしなかったのは選手に対しての配慮だったのだろう。

 これでJ1におけるさいたまダービーの成績は大宮の7勝5分け5敗となった。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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