石川、藤田は予選をどう戦ったのか=マスターズ予選ラウンド・リポート

課題は16番の水切りショット!?

 藤田寛之と石川遼、2人の練習ラウンドを見ていると20歳以上もの年の差など感じさせない良きパートナーのように感じられた。昨年の賞金王の藤田だが、マスターズは2年ぶり2度目。「遼に教えられることがたくさんある」とあくまでも、オーガスタナショナル攻略は、出場5回目の石川に一日の長があり、学ぶことが多いと藤田は謙虚に認めていた。グリーンの速さや硬さ、芝の密度の濃さなど藤田が知っておきたい情報は山ほどある。
 火曜日の練習ラウンドは、2人でアウトコースをプレーしたのちに、藤田はこう言っておどけて見せた。翌日の水曜日は2人でインコースを回ることになっているのだが、その日の最大の課題は「16番で水切りショットを成功させることです」と言うのだ。
 1月のハワイ合宿では4月のマスターズを念頭に猛練習に明け暮れ、それが原因になって肋骨の疲労骨折という裏目に出てしまった。藤田がボールを打てるようになったのは、ついマスターズの2〜3週前のことだったのだ。やらなければならない課題は山積みしている。それでも「水切り」が最大の課題というのは、もちろんジョークだが、プロとしてのサービス精神の表れでもある。

 練習ラウンドから何万人もの、このトーナメントではパトロンと呼ばれるギャラリーが詰めかける華やかな雰囲気。そしてこれ以上ないというほど整備されたコースに、藤田は素直に感動し、それの雰囲気を楽しんでいた。だから、パトロンから拍手喝采される16番パー3での水切りショットが練習ラウンドのハイライトとして、その成功が重要になると藤田は考えていたに違いない。

石川と藤田、同時のショットに大歓声

 池越えの16番パー3は、月〜水の練習日でパトロンたちが最も盛り上がるホールだ。ティショットを終えたプロたちがティグラウンドから下りてくると、スタンドに陣取ったパトロンたちは、口ぐちに水切りショットを要求し、拍手や口笛を送る。もし、それを無視してグリーンに向かって歩き出せばブーイングの嵐が待っている。

 今回は石川遼の提案で2人が同時にショットすることになった。池の縁で左足下がりになったライから打ち出された2つのボールは、2つ揃って水面を何度か跳ねて見事にグリーンオン。16番ホールは拍手と口笛、大歓声に包まれた。それは日本のプロゴルファーに対する賛辞のようにも聞こえたものだ。

「最初は『イチ、ニ、サン!』でやろうとしたんですけど、なかなかタイミングが合わないので結局『せいの!』になりました。4回スキップしたように見えたんですけど。ちょっとドロー回転が入るように打ったんです」と説明する藤田の顔は、本当にうれしそうだった。それはプロとして観客を喜ばせるプロ魂と言ってもいい。

予選通過に及ばない成績も表情は晴れ晴れ

「ここでプレーしているだけでニヤケてしまうんです。練習ラウンドは楽しくしょうがないんです」と言う藤田だが、ほぼ2カ月間クラブが握れなかったブランクがありながら太刀打ちできるほどオーガスタナショナルは甘くない。試合に入って、得意のアプローチでパトロンたちの喝采を受ける場面は何度もあったものの、目標の予選通過に遥かに及ばないトータル20オーバーというスコアで藤田のマスターズは終わった。

 しかし、藤田の表情は晴れ晴れとしたものだった。「昨年に比べれば、どこをどう攻めればいいのか、だいぶ分かってきました。ただ、体がそう動いてくれませんでした。今年は全米オープンにも挑戦したいし、来年もチャンスがあればマスターズに出たいですね」と43歳はまだまだチャレンジャー精神を忘れていない。

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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