西武、Vへの鍵握る2人の若獅子

中島大輔

「パワー型」から「スピード型」のチームへ

ルーキーイヤーを迎える金子侑司には、渡辺監督も戦力として期待を寄せる 【(C)SEIBU Lions】

 5年ぶりの日本一を目指す埼玉西武ライオンズには今季、目に見えて変わった点がある。攻撃における、本塁打と盗塁の割合だ。昨年のチーム成績を見ると、本塁打がリーグ2位の78、盗塁は3位の94だったが、今季開幕前のオープン戦では本塁打は12球団最少の1、盗塁は最多の26を記録。パワー型だったチームは、スピードで得点を奪うスタイルに変貌しようとしている。
 3月24日、オープン戦の最終戦でDeNAを下した後、渡辺久信監督はこう話した。「足を絡めた攻撃はキャンプから意識づけてきた。オープン戦でもそういう意識でやってきている。今のチームは、どの打順でも作戦が出るよ」

 その特徴が色濃く表れたのは同日、2対0でリードして迎えた2回の攻撃だ。先頭打者の新人・金子侑司がボールに逆らわないバッティングでセンター前安打を放つと、続く炭谷銀仁朗がきっちり送りバントを成功させる。永江恭平が外角高めのスライダーを上手くセンター前に弾き返して一、三塁にチャンス拡大。打順は1番に戻り、片岡治大(=やすゆき。易之から登録名変更)がピッチャー前へのセーフティースクイズで自らもセーフとなり、追加点を奪った。4人の足と技が絡み合った、実にスピーディーな攻撃だった。

新戦力として期待の金子と永江

 昨季終了後、3番として13本塁打を放った中島裕之がメジャーリーグのアスレチックスに移籍した。27本塁打で2年連続のホームラン王に輝いた中村剛也はシーズンオフに左膝を手術し、復帰はシーズン後半になると見込まれている。昨季活躍のふたりを欠いた打線は、確かに迫力不足を否めない。
 しかし、今季のライオンズには新たな魅力がある。次代を担う“若獅子”の存在だ。オープン戦では特に、金子、永江のふたりが猛アピールした。

 昨年のドラフト3位で立命館大から入団した金子は、8試合連続安打を含め打率2割9分2厘を記録。自らの手で開幕1軍をつかみ取った。俳優の向井理さんに似ていると話題になったルーキーは、50メートルを5秒7、塁間を3秒3で走る俊足が武器だ。立命館宇治高時代にスイッチヒッターに挑戦し、「監督に『人の2倍練習しろ』と言われ、毎晩、チームの最後まで残って練習してきました」という心の強さも持ち味としている。本職はショートだが、セカンドやサード、外野でも試され、渡辺監督は「戦力になる気がしている」と期待を寄せる。

 高卒2年目の永江は春季キャンプで調子がなかなか上がらず、首脳陣が心配する状態だった。しかし、キャプテンの栗山巧や上本達之の助言もあってオープン戦では打率3割7分5厘の好成績を残した。ボールをじっくり引きつけ、強くたたけるようになった印象だ。そのバッティングで参考にしたのが、3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でベストナインに選ばれた井端弘和(中日ドラゴンズ)。「右打ちのポイント、チームバッティングのときの体の使い方、どういう球を待っているのか」を参考にしたという。
 入団1年目から守備はプロでもハイレベルと評価されており、打撃のコツをつかみつつある今季、大きく飛躍を果たすかもしれない。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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