真央、ヨナ、コストナー、3人の嬉しい「カムバック」=世界フィギュア・女子FS

長谷川仁美

優勝したキム(中央)、2位のコストナー(左)、3位の浅田。この3人がそろって表彰台に上るのは4年3カ月ぶりとなる 【坂本清】

 フィギュアスケートの世界選手権、最後の種目・女子フリースケーティング(FS)が終わった。総合順位は、1位キム・ヨナ(韓国)、2位カロリーナ・コストナー(イタリア)、3位浅田真央(中京大)。表彰台にこの3人がそろったのは久しぶりで、懐かしい組み合わせだ。2007−08シーズンのグランプリファイナルと世界選手権、08−09シーズンのグランプリファイナル。この主要3大会で彼女たちは同じ表彰台に上り、今大会で3人とも「カムバック」して4年3カ月ぶりに同じ台の上に立った。

引退示唆も復活を果たしたキムとコストナー

 優勝したヨナは、10−11シーズンの世界選手権を最後に、昨年12月のNRW杯まで1年8カ月離れていた実戦に戻ってきた。
「07年から毎年、世界選手権に出場してきました。良い演技も良くない演技もありましたが、今大会では、ショートもフリーもノーミスでできました」というとおり、ジャンプはショートプログラム(SP)で1つ踏み切りのエラーがあったもののすべてきれいに着氷し、休養前と変わらぬスピードでリンクを滑り抜けた。
 五輪で金メダルを獲得し、世界選手権でもこれまで1度優勝。その輝かしい経歴から“負けるくらいなら復帰しない”という選択肢があったことはたやすく想像できる。しかし彼女は復帰を決めた。今大会に向けて想像できないほどの練習も積んできただろう。「最後の世界選手権になるかもしれない」今大会では、休養前より角が取れたまろやかな演技を披露し、栄冠を勝ち取った。

 昨季、世界選手権出場10回目にして初優勝したコストナーは、大きな目標を達成したことと、長年休まずに競技に取り組んできたことから、今シーズン前半のグランプリシリーズを休んだ。その間、引退を示唆したり、競歩の選手でもある恋人が薬物検査で陽性となり、ロンドン五輪を出場停止になるという大きな出来事もあった。そんな夏を越えて、彼女はSP、FSとも新しく作り、試合に帰ってきた。
 
 現役はソチ五輪までとする彼女にとっても、これが最後の世界選手権だろう。「今回、またメダルを持ち帰れて嬉しいです。去年は(世界選手権優勝という)大きな夢にたどりつけて嬉しかったし、誇りに思いました。11回目となる今回の世界選手権は、とても特別な気分です。とてもとてもハッピーだし、誇らしいです」

SP6位も諦めなかった浅田

 世界選手権に過去6回出場している浅田真央は、過去2度も世界チャンピオンになっているものの、昨季と一昨季のこの大会はともに6位に終わった。しかし今大会は順位を上げて3位。「SP(6位)の後、また6番だなと思い、『今までやってきたことはなんだろう』と思ったけれど、(最終的に3位となり)2シーズン後、(表彰台に)戻ってこられて良かったなと思いました」

 SP6位のあとも、彼女は諦めなかった。SPに続いてFSでもトリプルアクセルを入れ、両足着氷ながらも3回転半回っていると認定された。「最初のトリプルアクセルと3回転+3回転が入らなくて悔しいですが、その後はうまく気持ちを切り替えて最後まで気持ちよくできました」。すべてのジャンプを決めた最終盤には、生き生きとした明るい表情で会場を大いに沸かせた。そして、世界選手権の表彰台に返り咲いた。

 この3人が一堂に会する可能性のある大会は、来シーズンのグランプリファイナルとソチ五輪。この2回の大会の表彰台に、現在22歳、26歳、22歳の彼女らの笑顔が並ぶのか、それとも、村上佳菜子を筆頭とする16〜18歳のティーンたちの勢いが勝るのか。一時代のチャプターが終盤に近づいている。

<了>
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著者プロフィール

静岡市生まれ。大学卒業後、NHKディレクター、編集プロダクションのコピーライターを経て、ライターに。2002年からフィギュアスケートの取材を始める。フィギュアスケート観戦は、伊藤みどりさんのフリーの演技に感激した1992年アルベールビル五輪から。男女シングルだけでなくペアやアイスダンスも国内外選手問わず広く取材。国内の小さな大会観戦もかなり好き。自分でもスケートを、と何度かトライしては挫折を繰り返している。『フィギュアスケートLife』などに寄稿。

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