佳菜子3位 “最終披露”の場で見せた強さ=世界フィギュア・女子SP

長谷川仁美

世界フィギュア・女子SPで村上がシーズンベストで3位発進【坂本清】 【坂本清】

 フィギュアスケートの世界選手権、女子シングル・ショートプログラム(SP)では、世界選手権に2シーズンぶりに復帰したキム・ヨナ(韓国)が、踏み切りでのエッジミスはあったもののすべてのジャンプを決めて1位となった。2位にはリズムのとりにくい曲で彼女にしかできない世界観を生み出しているカロリーナ・コストナー(イタリア)、3位はシーズンベストを出した村上佳菜子(中京大中京高)。村上は、得点の高くなるプログラム後半にジャンプを2つ入れてノーミスで滑り、技術点では1位だった。
 浅田真央(中京大)は、トリプルアクセルを決めたものの、コンビネーションジャンプの1つ目の3回転フリップが回転不足に、3回転ループが1回転になるなどして6位、コンビネーションジャンプの2つ目で回転不足となった鈴木明子(邦和スポーツランド)は7位となった。

村上が今季最高の演技で3位

 この世界選手権は、来年2月に行われるソチ五輪の出場枠数が決定する大会として、とても重要だ。

 それとは別に、世界選手権という大会は毎年、選手たちにとって大きな節目にもなっている。シーズン終盤の3月に開催されるため、多くの選手がここを目指して練習してくるからだ。
 春から夏にかけて作ったプログラムを、体が自然に動くようになるまで覚え、試合でジャッジらの評判を聞いて修正を重ねる。そして、慣れてきたプログラムをより高度なものにするためにステップを追加して……そうやって、音楽と動きと気持ちが一体となるように滑り込んだプログラムは、まるで自分の分身のように感じられるようになっていく。世界選手権には、ここまでの1シーズン毎日練習してきたプログラムを最終披露するという意味合いもある。

 今季前半、SPで出遅れることの多かった村上。だが、試合を重ねるごとに得点を伸ばし、とうとう世界選手権では最高の演技を見せるまでになった。その笑顔は真っすぐで気持ちが良い。
 女子シングルSPの上位10選手のうち、今季自己最高得点を更新したのは村上、4位のケイトリン・オズモンド(カナダ)そして10位のビクトリア・ヘルゲション(スウェーデン)の3名だけだった。誰もが望んでいるけれど、そう簡単にはできないもの。今季最高の演技を世界選手権で見せられるのは、これまで積み重ねた練習と気持ちの強さがあってこそだ。

「シーズンベスト」。フィギュアスケートでは得点(シーズンベストスコア)のことを指すが、もっと広い意味で捉えたシーズンベスト……今シーズンの取り組みが実を結ぶ演技や、拍手の嵐、スタンディングオベーションなどを、16日(日本時間17日)のフリースケーティング(FS)では、1人でも多くの選手たちが受け取れることを期待したい。そしてそれに「シーズンベストスコアの更新」が加わるのであれば、それ以上のことはない。
 カナダのあたたかい観客たちの大いなる祝福が待っている。

<了>
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著者プロフィール

静岡市生まれ。大学卒業後、NHKディレクター、編集プロダクションのコピーライターを経て、ライターに。2002年からフィギュアスケートの取材を始める。フィギュアスケート観戦は、伊藤みどりさんのフリーの演技に感激した1992年アルベールビル五輪から。男女シングルだけでなくペアやアイスダンスも国内外選手問わず広く取材。国内の小さな大会観戦もかなり好き。自分でもスケートを、と何度かトライしては挫折を繰り返している。『フィギュアスケートLife』などに寄稿。

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