“世界標準”見据えて感じた期待と戸惑い=3得点快勝も日本が露呈した遠藤依存
対照的な内容だった前半と後半
後半開始から出場した遠藤が格の違いを見せつけたことにより、ボランチの層について不安も覚えた 【Photo:Getty Images】
日本が決定機を作ったのは、いずれも両サイドから。前半18分には清武の右からの素早いグラウンダーのパスに香川が直接狙うが、シュートは大きくバーを超える。31分には左サイドからのクロスに岡崎が頭で反応するも、こちらはGKがジャンプしてしっかりキャッチ。それでも徐々に日本はペースを引き寄せ、41分には今年最初のゴールが生まれる。清武がペナルティーエリア前で体を張ってボールキープ。セカンドボールを拾った長谷部が縦に流し、内田篤人がシュートを放つ。最後は岡崎が伸ばした右足に当たってコースが変わりゴールインとなった。前半は日本の1点リードで終了する。
後半、ザッケローニ監督は清武と細貝に代えて、前田と遠藤を投入。遠藤はそのままボランチに入り、前田は1トップ、岡崎は右MFに回った。遠藤が入ったことで、中盤は見違えるほど落ち着きを取り戻し、パスの選択肢も一気に増える。その効果は後半15分に表れた。遠藤のパスを受けた本田が大きく左に展開、これを香川が相手DFを引きつけながら折り返し、走り込んできた本田が左足のシュートでネットを揺らす。さらにその1分後、前田とのワンツーから香川が縦へパスを出し、飛び込んできた岡崎がGKの動きを冷静に読んで左足で流し込み、ダメ押しの3点目を決めた。この日、通算31ゴール目を決めた岡崎は、原博実氏(日本サッカー協会技術委員長)が持つ国際Aマッチの得点記録3位(37ゴール)に、あと6ゴールと迫った。年内に抜き去る可能性は、十分にあるだろう。
その後の日本ベンチは、酒井高徳、乾貴士、伊野波雅彦、大津祐樹を相次いでピッチに送り出す。とりわけ目立っていたのが、わずか28分のプレー時間ながらチーム最多7本のシュートを放った乾の積極性、そして代表初キャップを刻んだ大津の初々しさであろうか。すっかり意気消沈したラトビアに対し、その後も日本は相手を圧倒し続け、3−0の完勝で今年最初のゲームを終えた。
遠藤の“格の違い”がもたらす戸惑い
そのラトビアを率いたスタルコフス監督。試合後の会見で「最も脅威に感じた日本のコンビネーションはどれか?」という質問に対し、「香川、長友、本田による左サイドのコンビネーション」と答えていたのが興味深かった。ザッケローニは一貫して、香川を左に、本田を中央に置くことにこだわってきたが、この試合に関しては香川の左は非常に効果的であった。確かに、乾が左に入って香川が中央にスライドした後半17分以降の攻撃も、なかなかに見応えはあったが、残念ながらゴールは生まれていない。本田が下がったあと、左からの崩しで乾や香川が得点を決めていれば、この試合の評価はまた違ったものになっていただろう。
いずれにせよ、今の日本代表の得点源を支えているのが、両サイドの人材の豊富さと競争力に負うところが大きいのは、誰もが認めるところであろう。その一方で、有り余るタレントがひしめいている両サイドに比べて、ボランチの人材が極めて限られているのは、どうしたものか。この日、久々のスタメンとなった細貝は、前半のチーム状態が低調だったこともあり、やや気の毒な面があったのは否めない。それでも、遠藤が入ってからのチームの変わりようを見ると、やはり「格の違い」というものを感じずにはいられなかった。もっとも、今年はJ2で戦う33歳の遠藤が、来年のW杯本番までトップフォームでいられる保証がないのも事実。だからこそ、細貝なり高橋秀人なりが、もっと頼れる存在になってもらわないと困るのだが。
先に触れたように、今年はW杯予選突破、さらにはコンフェデ杯をはじめとする“世界標準”に向けた戦いが目白押しである。このラトビア戦を起点として、13年の日本代表がどこまで進化を遂げていくのか、今年もしっかりと見届けながらレポートすることにしたい。そして年内最後の代表戦が終わるころには、来年のブラジルでの祭典が待ち遠しく思えるくらい、さらに強く魅力的な日本代表となっていることを、心から願う次第である。
<了>