福原愛と石川佳純、歴史に残る2強時代=卓球女子の勢力図は変わらず

小川勝

五輪銀メダルの3人がそろって出場

全日本卓球選手権の女子シングルス決勝は2年連続同カード。福原(奥)が石川(手前)を下して連覇を達成した 【写真は共同】

 福原、石川の2強時代は続く――。
 全日本卓球選手権は20日、東京の代々木第一体育館で6日間にわたる熱戦を終了した。ロンドン五輪翌年の今年、福原愛(ANA)、石川佳純(全農)、平野早矢香(ミキハウス)のロンドン五輪代表3人に迫る新興勢力の台頭も期待されたが、結果は、昨年に続いて優勝・福原、準優勝・石川だった。福原、石川という2強が、名実ともに、頭一つ抜けた存在で、3年後のリオデジャネイロ五輪に向けても、この2人が中心になることは、ほぼ間違いない状況にあることが証明される大会となった。

 福原24歳、石川19歳、平野27歳。ロンドン五輪の団体戦で銀メダルを獲得した後、3人はそろって現役の続行と、リオデジャネイロ五輪への意欲をすでに語っていた。五輪から5カ月。今回の全日本選手権は、五輪後初めて、3人がそろって出場する大会でもあった。

 福原は五輪後、痛みのあった右肘を手術したため、9月から11月まで卓球の練習を休んでいた。主な活動は、祝賀行事への出席、さまざまなイベントへの参加、テレビ出演などで、3カ月間は肘の回復に充てていた。石川も、福原同様に行事への出席やテレビ出演が続いて、11月いっぱいまで、試合には復帰しなかった。
 1人だけ、早くに実戦復帰したのが平野だった。国際卓球連盟のワールドツアー、ドイツ・オープン(10月31日〜11月4日)から復帰して、ポーランド・オープン(11月7日〜11日)にも出場。五輪終了後は、やはりさまざまな行事に出席していたため、本来の彼女からすれば、練習量が十分とは言えず、2大会とも、世界ランキングでは格下の選手に敗れていた。

 福原と石川が実戦復帰したのは、昨年12月6日から9日に中国で行われたワールドツアー・グランドファイナルだった。2人とも久々の試合だったため、福原は初戦で敗退、石川は21歳以下のカテゴリーの試合に出場して、優勝していた。

平野がまさかの初戦敗退、高校生に敗れる

 こうして迎えたのが2013年1月の全日本選手権だった。
 最も仕上がりを懸念されていたのは、やはり、肘を手術していた福原だった。一方、最も早く実戦に戻っていたのは平野だったから、この大会優勝5回、最近3年間は優勝から遠ざかっている彼女が、久々に有力ではないか――そういう見方が出てくるのも当然だった。

 しかし大会3日目、平野が初戦で敗退した。シードされていたため4回戦からの登場だったが、高校2年の前瀧初音(正智深谷高)に0−4で敗れた。前瀧はインターハイでもベスト32が自己最高で、高校生の試合でも全国のトップを争ったことはない選手だったが、平野はこの前瀧から1ゲームも奪うことができなかった。試合内容も、相手に思い切った攻撃を決められるというより、ラリーの中で平野の方がミスを多く犯して失点するというパターンが目立った。平野に勝った前瀧は、その次の5回戦で敗れている。

 この試合の前日、ミックスダブルスで初戦に勝った後、「やっぱり試合っていいなあと思いました」と、気持ちは乗っていた。
「全日本選手権というのは、日本で一番大きな大会。自分も、ミキハウスに入って、初めて優勝して、そこから目標とか、気持ちが大きく変わった大会だった。五輪を終えて、この大会でまた新しいスタートと位置付けている」と語り、全日本選手権へのモチベーションも高かった。

 それだけに、シングルスでの初戦敗退は予想外だった。18歳でこの大会を初優勝して以来、初戦敗退は初めてのことでもあった。

 また、ミックスダブルスはベスト8、ダブルスは3回戦で敗退した。シングルスで敗れた後、「どこをどうすればいいか、終わったばかりで、まだ整理できていない」と語った。徹底的に練習量をこなして、自分の卓球を作り上げていくタイプだけに、今後、また本来のキレを取り戻す可能性はあるが、ロンドン五輪代表3人の中で、その一角がこの大会で崩れたことは事実だった。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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