猪木・『ロッキー』にも通じる老拳士決死のメッセージ=映画『燃えよ!じじぃドラゴン』

しべ超二

じじぃたちがカンフーで大暴れ! 映画『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』の魅力を紹介 【(c)2010 Focus Film Limited All Rights Reserved.】

 2013年はブルース・リーの没後、そして世界中に“カンフー映画”というジャンルを確立させた永遠のマスターピース、『燃えよドラゴン』の製作40周年となるメモリアルイヤー。

 そんな記念イヤーにふさわしく、平均年齢60オーバーの老拳士たちが大暴れするカンフー映画『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』がやって来た。あの“西の傑作シリーズ”とも東西の壁を超え通底するメッセージを持つ本作の魅力を、考えるな、感じろ!

衰えないカンフーのキレ、こんなじじぃになりたい!

挑戦し続けるじじぃたちがキラキラしていて実にカッコイイ! 【(c)2010 Focus Film Limited All Rights Reserved.】

「人は歩みを止めた時に、そして挑戦を諦めた時に年老いていく」
 引退試合を終えたリングで、アントニオ猪木はいみじくもこう言った。
 現在もIGF会長として「ふざけるな、この野郎! かかってこい!」と年末興行で観客にブチ切れるなど、70歳を目前にしながら若いと言わざるをえない猪木だが、それはやはり自身が今も歩みを止めず、挑戦を続けているからだろう。
 本作に登場する俳優たちも平均年齢は60歳を超え、言うなれば立派な“老人”だが、歩みを止めず鍛錬を続けてきたからか、実に若い。長年の稽古に磨かれたカンフーには衰えを見せないキレがあり、フォームも実に決まっている。鑑賞途中から早くも「こんなじじぃになりたい」と思わせるほどだ。

 だが、そんなじじぃたちがキラキラとしたカッコよさを見せる本作だが、物語の中心となるのは何をやってもうまく行かないダメ青年・チョン。リアルのび太を思わせるチョンが、ジャッキーの『拳シリーズ』のように、作品を通じて成長していく姿が物語の重要な軸となっており、カンフー映画の王道にのっとっている。
 また、カンフー映画に欠かせないオープニングも、本作は十二分にその期待に応える出来。雷鳴がとどろく背景をバックに、黒いシルエットの人影が「ボッ、ボッ、ボッ」と例の空を切り裂くカンフー映画独自の効果音を伴いながら、大げさなぐらい大きく手足を振り回す。特訓シーンに登場する「木人」ともども、そんなカンフー映画の“お約束”が忘れられていない。

「勝ち負けより大事なことがある 変わることよ」

ロッキー、猪木にも通じる“変化”の大事さをあらためて教えてくれる作品だ 【(c)2010 Focus Film Limited All Rights Reserved.】

「強い拳を打てるよりも 強い拳で打たれた時にまた前に出る勇気が大事だ」など名ゼリフが多いのも本作の特徴だが、中でも「勝ち負けより大事なことがある 変わることよ」というヒロインが発する一言を特に推したい。
 これなどドラゴとの死闘を制した後にヒューマニズムを爆発させてロッキーが叫ぶ、「人は変われる!」(『ロッキーIV/炎の友情』)を思わせるではないか。
 第1作から最終作(第6作)まで、ロッキーは常に“変わること”で強敵に打ち克ち、自身の未来を切り開いてきた。新しい自分に“変わること”で、過去の自分を乗り越える。“変わること”が強さを生み出す。変化を恐れず、歩み・挑戦を止めない。それが若さにも強さにも、あらゆることにつながる道であること。
 猪木が説き、『ロッキー』がシリーズを通じて伝えてきたそんなメッセージを、『じじぃドラゴン』はカンフーとともにもう一度我々に教えてくれる。


映画『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』はシネマート六本木、シネマート心斎橋にて公開中
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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。

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