札幌U−18の優勝から感じた明るい未来=2012 Jユースカップ 総括
札幌U−18の強さはピッチ外にも表れていた
Jユースカップを初めて制した札幌U−18。ピッチ内外で強さが表れていた 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】
コンサドーレ札幌U−18の初優勝で終わった第20回の記念大会となるJユースカップ。24日に行われた決勝後のポストマッチファンクション(交歓会)の壇上、札幌U−18の主将で来季からのトップ昇格も決まっているMF堀米悠斗はこうあいさつした。
Jユースカップでは、将来Jリーグで活躍する選手を育成するためのピッチ外のアプローチとして、こうした会を設けた上で選手がオフィシャルな場で発言する機会、大人と交流する機会を積極的に与えている。あいさつの機会があることを事前に知っていたとはいえ、その席で堀込は単に優勝したことの喜びを語るのみならず、大会主催者への感謝や相手チームへリスペクトの気持ちを述べた。
準決勝(対サンフレッチェ広島ユース)、決勝(対ガンバ大阪ユース)共に大量5得点で、5−1と圧勝した札幌U−18の強さはピッチ上のみならず、こうしたピッチ外での選手の立ち振る舞い、言動にも表れていた。決勝後の囲み取材で、筆者は思わず「あれだけ人前でしっかりと話すことができるのは、やはりサッカーをやってきたお陰なのですか?」という質問を堀米に投げかけた。すると、彼からこういう回答をもらった。
「中学校のころからキャプテンをやらせてもらい、普通の高校生ではこんな経験はまずできないと思います。本当に人間的に成長させてもらったなと思っているので、キャプテンに選んでもらった監督、チームには、すごく感謝しています」
この選手をうまくするにはどうすべきか
優勝した札幌U−18やプレミアリーグチャンピオンシップで連覇を達成したサンフレッチェ広島ユースのように、Jユースカップで上位に進出するようなJユース(アカデミー)はピッチ内外で高いレベルの指導を施し、技術的に「うまい選手」ではなく、逆境にも耐えうるハート、強いメンタルを持った「魅力ある人材」を育成するようになってきた。例えば、札幌U−18はこの時期、当然のように雪の影響でグラウンドでの練習ができず、大会やアウエーでの試合に参加するとなれば基本的には飛行機移動が伴う。
それは一見、地理的ハンディキャップに映るのだが、札幌U−18の四方田修平監督は、「(札幌の選手は)ちょっとした環境の理不尽さには耐えられますし、移動が飛行機というのも選手たちにとっては当たり前。そういう意味では、トップの選手も含めそういうストレスには強いと思います」と語る。つまり、コンサドーレ札幌のアカデミーではそれを言い訳にするどころか、選手の心と体を鍛えるための材料として逆利用しているわけで、事実決勝でハットトリックの活躍を見せたMF中原彰吾も「環境がデメリットだとは思っていませんし、環境は変えられないもの。それを言い訳にせず、『絶対に負けない』という気持ちでやってきた」と話していた。
Jリーグ技術委員長の上野山信行氏も、「高体連か、Jクラブか」といった話ではなく、「この選手がどうか」という話をしていく時期にあると述べる。「(育成とは)選手個人の育成です。確かに競争のためのライバル意識はあっていいと思いますが、Jクラブも高体連も同じサッカーファミリーの一員なのですから、『この選手をうまくするにはどうすべきか?』というように考えていくべきだと思います。ライバル意識を持つにせよ、それは良いライバル関係にしてもらいたいですね」