札幌U−18の優勝から感じた明るい未来=2012 Jユースカップ 総括
札幌アカデミーの長所
決勝戦でハットトリックを達成した中原(白)。環境を言い訳にはせず「『絶対に負けない』という気持ちでやってきた」と話した 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】
その上野山氏から見た札幌アカデミーの長所は、「スタッフ間の共通目標、共通の活動と認識。そのあたりが統一されていること」、「冬に雪が降るハンデの時期でも、お金をかけて県外に出て行って、ハンデを克服するアイデアや行動力も持っていること」、「広い北海道の中で選手を育成しようという考え方を持っていること」の3点。
特に3つ目のポイントは、他のJクラブも参考事例として注目すべきものだと考える。Jユースカップ初優勝を目指して戦った札幌U−18の合言葉は「北海道の歴史を変える」。優勝後、四方田監督が「長年にわたって情熱を注いでくれた指導者の方がたくさんいます。そういう人たちの元で育った選手たちが札幌に集まり、今回の成果が出た」と話せば、複数の選手から「北海道の代表として優勝できてうれしい」というコメントが聞こえてきた。
トップチームが強い、あるいはスター選手、看板選手を抱えることでトップダウン的に訴求力を持つことはクラブ運営の王道ではあるのだが、札幌のように地道・地域に育成ピラミッドを根付かせ、地元北海道から集め、育て、鍛え上げた選手たちをトップチームに数多く輩出することでボトムアップ型の訴求力を築くクラブ運営もJリーグの理念である「地域密着」の一つの方法論で、むしろ日本的なアプローチなのではないか。札幌の成果は、この決勝の会場が長居スタジアムとはいえ地元大阪でホームとして戦ったG大阪ユースのサポーターよりも、札幌U−18を応援するサポーターの数や声のボリュームが多かったという事実からも見てとれる。
育成の本当の価値とは
残念ながら今季の札幌はトップチームがJ2降格となってしまったが、育成文化がしっかりと浸透するこのアカデミーからはこの先も継続的にトップ昇格する選手が輩出され、ユースのみならず各カテゴリーのチームが全国の舞台で結果を残すだろう。それを確信させてくれるかの言葉も、堀米悠斗から出ていた。
「J2に降格してしまってサポーターも苦しい時期だと思いますが、札幌の良さというのは、ユースからの選手が多いところ。時間はかかると思いますけど、僕たちがしっかりとプロで通用できるレベルになれば、明るい未来は待っていると思います」
<了>