甲府のコンディショニングが生んだ脅威の“3パーセント”=J1昇格を支えた黒子の力
ダヴィが活躍した最大の要因
コンディションを保つことで、ポテンシャルを存分に発揮し、J2得点王に輝いたダヴィ 【Getty Images】
コンディションを保つことで、ポテンシャルを存分に発揮した選手がいる。それがダヴィだ。彼は11/12シーズンの途中に加入したのだが、当時は移籍の影響もあり、コンディションがベストにあるとは言いがたかった。
「11年のシーズンを終えたとき、ダヴィに『シーズンオフに体脂肪を増やさなければ、来季はもっと良いプレーができるはずだよ』と言いました。するとダヴィは体脂肪を増やすことなく、キャンプインしてくれたんです。今季、彼の体重の増減幅は1kg以内でした。トップ選手は2kg体重が変われば、プレーの感覚を失ってしまいます。ベストの体重をキープし続けることが大切で、彼もその重要性を理解していました。それが、今季の大活躍の一因だと思います」
筋肉系のトラブルによる選手の途中交代は皆無
そのことに谷は次のように力説する。「コンディショニングはグループワークです。選手、メディカル・スタッフ、監督、コーチがつながり合って、ゲームのコンディションを作っていきます。それぞれの立場で責任をもって行動することで、チーム全体がうまく回るのです。今季のようにグループワークがうまくいくとケガ人の数は減ります。実際、公式戦で筋肉系のトラブルで途中交代を余儀なくされた選手は皆無でした」
ケガ人が10パーセントを超えて、5人、6人となってくるということは、グループのどこかに問題を抱えているということになる。トレーニングをオーガナイズするコーチングスタッフには、現状に適したトレーニングの量と質のコントロールが求められるのだ。
「夏場のトレーニングについて、城福監督はかなり意識していました。甲府の夏は、肌を突き刺すような日差しでかなり暑いんです。選手に対して『時間は短いから、ここは集中してやってくれ』というように、強度を保って、ボリュームをうまくコントロールしていました。夏はただでさえ暑さから食欲が落ちます。すると筋肉量も落ちてくるので、パフォーマンスも低下し、ケガのリスクも高まる。そこはチーム全体で気をつけながらやっていましたね。やはり、チームは監督の意向が強く反映されるものなので、監督にこうしろと言われたら、その通りにせざるを得ないんです。でも、城福さんとはコンディショニングに対する肌感覚が共有できたので、選手へのフィードバックもスムーズにできました」
谷が選手の顔色を見ながら、そろそろ休ませたほうがいいかなと思うと、城福監督が『明日の午後と明後日は休ませるか』と、タイミングよく休息を設ける提案をしてきたこともあった。そして、休息日になると、メディカル・スタッフや選手たちは懸命に回復に努める。その積み重ねがコンディションを作り上げていったのである。