浅尾美和「コートの上が一番幸せでした」=引退会見全文

スポーツナビ

「3年くらい前は3位もなかなか取れなくて、その時は正直一番つらかった」

3位も満足に取れなくなってきた3年前が一番つらかったと振り返った 【スポーツナビ】

――小学1年生からバレーを始めておよそ19年間、振り返ってどのようなバレー人生、ビーチバレー人生でしたか?

「本当に色んなことがあったんですけど、楽しいことだったり、苦しいことだったり。でもそれがあったから、色んなことに対して感謝の気持ちだったり、応援してくれているファンのみなさんの大切さだったりをすごく分かったような気がします。自分はまだまだ成長しなければならないですけど、ビーチバレーが私を成長させてくれた部分がたくさんあると思います」

――今後どのような活動をして、どのような夢を追っていくのか教えてください。

「やっぱりビーチバレーが大好きなので、ビーチバレーを色んな人に知ってもらいたい。私はビーチバレーの魅力も知っていますし、子どもが大好きなのでバレー教室だったり、そういう部分でやっていけたらなと思います」

――人気・注目度と試合結果のギャップに葛藤があったのではと思いますが。

「そうですね……。でも、それもあったので、ブログにも書いたんですけど、絶対にいつか見返してやろうという気持ちが強くあったので、そういう部分では、色んな人に言われることもあったんですけど、でもビーチバレーを色んな人に知ってもらえるきっかけにも自分はなったのではと思っているので、それは良かったことだと思います」

――競技生活の中で一番苦しかったことは?

「やっぱりなかなか勝てなくて、ずっと3位、3位という風に言われてて、でも3年くらい前はその3位もなかなか取れなくなってしまって、その時は正直一番つらかったです」

――自分のプレーでビーチバレーが世間に広まっていったという自負は持っていたのでしょうか?

「うーん……そうですね……。なんか、そういう風に自分もしっかり思えていたら、また違ったかもしれないんですけど、どうしてもそこから逃げたいっていうのも自分の中であったので、そういう風にはちょっと思えてなかったかもしれないです」

「気持ちが切れてしまうと、なかなかまた頑張ろうという気になれなくて」

ファンにすみませんではなく、ありがとうと言えるようになった 【坂本清】

――今年1年は去年までと違って、笑顔が多くなってプレーしていたように見えたのですが、これまでとは違う心境の変化があったのでしょうか?

「はい、今年はオリンピックの年ということもあって、そういう目標があったのでモチベーションが高かったのと、でも五輪に行けなくてもしっかり国内戦で結果を出せば、また私のこれからの道がどんどん広がっていくんじゃないかと思っていました。それもあって今年のシーズンの初めは絶対にオリンピックに行けると思っていたので、このチームだったら絶対に優勝できると思っていたので、それでモチベーションが高かったんだと思います」

――そのオリンピックという目標がかなわず、年間チャンピオンも届かなかったことが引退の大きな理由ということになるのでしょうか?

「そうですね。どうしても気持ちが一番だと自分も思っていて、今まで気持ちが全然切れなかったからビーチバレーをずっと続けてこれたと思うんですけど、気持ちがあるからつらい練習も耐えてこれたと思いますし、でも、その気持ちが切れてしまうと、なかなかまた頑張ろうという気になれなくて。それがやっぱり原因だと思います」

――西堀選手とペアを解消されてから、ペアを組むことに苦労されていたように思えたのですが、その時の気持ちは?

「報道にもペア選びですごく悩んだという風に書いてあったと思うんですけど、私は全然そんな風には思っていなくて、色んな人と組んでビーチバレーができたことはすごく幸せなことだと思いますし、ビーチバレーってそうやって色んな人とペアを組んだりするのも楽しさの1つだと思うんですよ。私の場合はちょっと特殊で、ひとりの選手と、タケさんとすごく長い間組んだので、そのイメージがあるからそういう風に言われてしまうと、今まで私と組んでくれた選手にもすごく申し訳ない気持ちにもなってしまうので、そういうことは全然なくて、色んな人とペアを組めて……8年間ビーチバレーをやってきて、私がペアを組んだ人数って少ない方だと思うんですよ。なので、そういう部分ではあまり悩んだりとか思ったことはありませんでした。すみません……」

――よく試合の後にファンの方に謝っている姿があったと思うんですが、やはりその時は申し訳ない気持ちでいっぱいだったのでしょうか?

「そうですね。なかなか勝つことができなくても、応援してくれてるファンのみなさんはいつも会場に来てくださって、そういう人たちの前でうまく笑えなくなってしまったときがあったので、その時はすごく申し訳なくて、その時に1度、引退した方がいいんじゃないかなと思ったんですけど、でもファンの人たちはいつも勝ち負けじゃなくて、私が楽しそうにビーチバレーをプレーしているのを見に来てくれているんだっていうのが分かった時に、なんかすごく肩の力が抜けて、素直に、応援してくれてる方たちに対してすみませんじゃなくて、ありがとうございますと言えるようになったので、すごくいい経験をしたなと今は思っています」

――そういったファンの方たちにメッセージがあればお願いします。

「いつも会場に足を運んでくれたファンのみなさんだったり、ブログなどで応援してくれてたみなさんには、今年の試合が終わったあと、私が来年もプレーを続けるときっと思ってくれてて、『また来年も頑張ってね』『来年はきっと勝てるよ』と色んな人に言ってもらえたんですけど、でも……こういう形でみなさんにお伝えすることになってしまい、すごく申し訳ないと思っています」

「もっと色んな人にビーチバレーの楽しさを分かってもらえたら」

浅尾は「もっとビーチバレーの楽しさを広めていきたい」と新たな夢へ笑顔を見せた 【スポーツナビ】

――ビーチバレーの人気の高まりはどのように感じていましたか?

「初めてビーチバレーの会場にスタンドが立った時はすごくうれしくて、すごく感動したのを覚えています」

――来年以降、今後のビーチバレー界に期待することは?

「私なんかが言うのもアレなんですけど、私もビーチバレーの魅力にどっぷりハマって、大好きだった競技の楽しさを色んな人に分かってもらえたらとすごく思っています。今年とかは大会の中でファンのみなさんにビーチバレーのコートに入ってもらって、ビーチバレーを体験してもらったりして、ファンの方が『ビーチバレーの選手ってこんな動きにくい砂の中でやっているんだ』って実際に体験することで、またビーチバレーの魅力に気づいてもらえたと思ったんです。そういった活動を、私も協力していきたいと思っているので、もっともっと色んな人にビーチバレーの楽しさを分かってもらえたらなと思っています」

――最後にメッセージをお願いします。

「今日は本当にありがとうございました。最初、私が引退するから記者会見をすることになりましたと言われた時に、今まで私もテレビでいろんな素晴らしいアスリートの引退会見を見てきてたので、私なんかが……すごいタイトルを取ったわけでもないですし、記者会見をするというのが申し訳ないというか、私なんかがここにいていいのかなとも思っていたんですけど、今日、こんなに素晴らしい会場で、こんなにたくさんの方に来ていただいて、こうやって私の思いを伝える場所を作っていただいて本当にうれしく思っています。本当にありがとうございました」

<了>

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