室伏広治「五輪精神が凝縮した聖火台、新国立競技場に残して」=被災地の子どもたちと聖火台を磨く
被災地の子どもたちも聖火台磨きで夢
室伏が一流アスリートであるゆえんは、こういうところにあるのだろう。長きにわたって現役選手を続けながら、スポーツの振興やスポーツを通じた社会貢献に力を入れていることはよく知られている。
そんな彼を慕う選手は多く、この日も同じ陸上界から北京五輪・男子4×100メートルリレー銅メダリストの末續慎吾(ミズノ)、ロンドンで五輪初出場を果たした男子やり投げのディーン元気(早大)、男子短距離の飯塚翔太(中大)、室伏の妹で女子円盤投げとハンマー投げで日本記録を持つ室伏由佳(ミズノ)、そして6度のパラリンピック出場を果たした競泳の河合純一らが聖火台磨きに加わり、「聖火台に触れたのは初めて。貴重な体験だった」と感激しきりだった。
室伏は言う。「ロンドン五輪では“Inspire a generation”がキャッチフレーズだった。日本の若い世代も五輪にインスパイアーされた(発奮させられた)んじゃないか」と。また自身が支援する20年夏季オリンピック・パラリンピックの招致活動に絡め、「東京で五輪を開くことができたら、夢や目標を持ちにくいこの時代でも何かを成し遂げようという意欲が沸いてくると確信している」と語った。
そして、この日はロンドン五輪後から注目されている現役続行についても触れ、「まずは日本選手権を目指そうと思う。体力の限界に挑戦する姿を見せられれば、人々に勇気や希望を与えられると思う」と意欲を見せた。
五輪精神が凝縮された聖火台を新国立競技場に
室伏も新生・国立競技場を歓迎するが、気になるのは聖火台の行方である。
コンペに参加した、ある日本の建築事務所の関係者は、「国立競技場の文化財産については主催者側から全部で17項目の説明を受けた。その筆頭が聖火台だった。そこには“活用を検討すること”との一文があるのみで、判断は各コンペティターに委ねられた。だが私たちのプランでは聖火台を残すつもりだった」と話す。決定したデザインの詳細はあいにく公開されていないが、「残す方向で調整されるのではないか」とのことである。
この日のイベントの終わりに点火もされた聖火台。そのオレンジ色に燃える火を見つめながら室伏はこう締めくくった。
「新しい競技場ができるのはもちろん楽しみだが、東京五輪のレガシー(遺産)は守っていきたい。日本人は物を大切にする国民性。その精神を大切にし、未来に引き継いでいきたい。鈴木さん親子の思いと五輪の精神が凝縮された聖火台を、ぜひ新しい競技場に残して使ってほしい」
<了>