「団体競技」に見る新体操の可能性〜第65回全日本新体操選手権大会〜

椎名桂子

男女ともに魅力的な演技で会場を沸かせた団体競技。写真は女子準優勝の日本女子体育大の演技 【野口卓也】

 2012年11月16〜18日の3日間にわたって行われた全日本新体操選手権は、個人総合で、女子は山口留奈(イオン)、男子は松田陽樹(青森大)の優勝で幕を閉じた。
 しかし、今大会で、個人総合以上に盛り上がりを見せたのは、団体競技だった。

人気上昇中の男子新体操 史上最多の集客!?

ますます注目度が上がる男子団体。強豪の青森大が4連覇を達成した 【榊原嘉徳】

 新体操の団体競技は、女子は、手具を用いて5人編成で行う。ロンドン五輪には、日本代表チーム「フェアリージャパンPOLA」も出場し、7位入賞を果たしているので、見たことのある人も多いのではないかと思う。
 一方、男子は、手具を使わない「徒手」の6人編成で演技を行う。こちらは、ダイナミックなタンブリング(転回技)や、人が人を持ち上げる、跳ばすなどの組み技、さらには、6人がぴったりそろって動く同時性などが見せ場になり、近年、動画サイトなどを通じて認知度も上がり、注目されてきている。

 とくに今大会は、大会直前に、全日本選手権4連覇に挑む青森大団体が、テレビで取り上げられ、大会の告知を行ったものだから、18日の団体決勝の日は、おそらく新体操全日本選手権史上最多と思われる観客動員を記録。あの大きな代々木第一体育館の観客席を一番上まで埋めた。
 その大観衆を前に、青森大は、王者にふさわしい盤石な演技を見せて優勝し、4連覇を達成。さらには、2位の国士舘大は、空気の流れまでもがそろって見えるほどの同調性のある演技、3位の井原高は、隅々まで澄みきったような美しい演技を披露。4位以下のチームもそれぞれに個性あふれる魅力的な演技で会場を沸かせた。青森大目当てに会場に足を運んだ人たちは、“青森大だけではない”男子新体操団体競技の素晴らしさを目の当たりにしたのではないだろうか。

歴史に残る激戦だった女子団体競技

女子団体優勝の東京女子体育大の演技。ライバルとの僅差の勝負を制した 【野口卓也】

 また、女子の団体競技も、今年は「死闘」と呼ぶにふさわしい熱い戦いだった。新体操の世界、とくに団体では、「東京女子体育大(以下、東女体大)」は絶対的な女王で、全日本選手権でも第62回まで無敗を誇っていた。しかし、一昨年の第63回大会で、日本女子体育大(以下、日女体大)に負け、初黒星を喫し、続く64回大会でも2位に終わっていた。3連敗だけは絶対阻止したい「背水の陣」の東女体大は、1日目のボール5団体では、ノーミスの迫力あふれる演技を見せ24.825を獲得、同じく大きなミスなく演技をまとめた日女体大の24.625をわずか0.2リードする。団体総合優勝のかかった2日目のリボン+フープ団体では、試技順10番で登場した東女体大が、これまたノーミスの素晴らしい演技で24.850と日女体大を突き放したように見えたが、試技順12番の日女体大も、負けじと気迫にあふれるノーミス演技で応酬し、なんと24.925と東女体大を上回る点数を得た。2種目合計では、0.125差で東女体大が日女体大をくだし、3年ぶりの王座奪還となったが、近年まれに見るきん差の名勝負となった。

 2校の熱い戦いは、3日目の種目別決勝にも持ち越され、「種目別は2つとも勝つ!」という意地のぶつかり合いで、両校ともに2種目とも、手具交換時のわずかな移動のほかはミスらしいミスもなく、素晴らしい演技を見せる。結果、ボール5団体では0.15差で東女体大が、リボン+フープ団体では0.025差で日女体大が勝利し、種目別優勝を分け合う形となった。徒手で行う男子団体とは違って、手具を投げ上げたり、交換をする女子の団体競技では、上位チームといえどもミスはつきものだが、今大会の上位2校は、4回の試技すべてがほぼノーミスという神懸かり的な強さを見せた。

「団体競技」には、世界に通じる可能性がある

 日本の代表は「フェアリージャパンPOLA」が定着しているため、そのフェアリー不在の全日本で優勝しても、日本一ではないという見方もあるかとは思うが、フェアリージャパンPOLAはあくまでも国際大会仕様の日本代表チームであり、国際大会で戦うための強化を受けている。しかし、こと技術力や、観客に訴える力などは、必ずしも彼女たちが日本のトップというわけではない。
 今回の全日本選手権で東女体大、日女体大が見せた「学校の威信をかけた激闘」には、五輪に勝るとも劣らない感動があった。スタイル、身体能力など、高いハードルのあるフェアリージャパンPOLAは、万人が目指せるわけではない。多くの新体操をやっている子ども達にとっては、国内でトップ争いをしているチームこそが、現実的な目標であり、夢なのだ。この2校や、その次に続く武庫川女子大や国士舘大などのチームが、こうして切磋琢磨することでより競技力を上げていき、「フェアリージャパンPOLA」だけが、日本の団体チームではない! とその存在を示していくことで、今後の日本の女子新体操を盛り上げていくのではないだろうか。

 「お互いを思いやり、呼吸をそろえて、チーム力で戦う」団体競技は、日本人の特性にはよく合っていると言われている。新体操という表現スポーツの世界でも、日本が世界で勝負できる可能性があるのは団体競技と言われて久しい。現に男子新体操は、その同調性、芸術性が認められ、海外での公演依頼があったり、世界的エンタメ集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の演目にも採用されている。
 団体競技にこそ、世界に通ずる道はある! そう確信できる素晴らしい演技を男女とも堪能することができた実り多い、新体操全日本選手権だった。

<了>
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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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